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タテとヨコのコミュニケーション、どちらが大事?

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Harvard Business Review の最新号(February 2009)に、社内コミュニケーションに関する小論文が掲載されています:

How Social Networks Network Best (Harvard Business Review)

組織内で何らかの決断を下すために行われるコミュニケーションを、各々の構成員が情報を探す(情報検索)」「発見した情報を一つにまとめて判断を下す(情報統合)」の2つに分け、情報検索においては中央集権型組織が有効であり、情報統合においてはネットワーク型組織が有効であると説いています。では最終的に、中央集権型とネットワーク型のどちらが望ましいかというと:

Recent studies at MIT reveal that this sort of oscillation may be characteristic of creative teams. One intriguing study tracked employees in the marketing division of a German bank by having them wear small sensors called sociometers for one month. Sociometers record data about face-to-face interactions such as participants’ identities and the location and duration of the interaction. Analysis of the data showed that teams charged with creating new marketing campaigns oscillated between the centralized communication associated with discovery and densely interconnected conversations that were mostly with other team members. In contrast, the members of implementation groups showed little oscillation, speaking almost exclusively to other team members.

最近MITで行われた一連の研究によれば、(中央集権型とネットワーク型、2つの組織構造の間を)「揺れ動く」ことがクリエイティブなチームの特徴である。ある興味深い研究では、ドイツ系銀行のマーケティング部門のメンバーに「ソシオメーター」という小さなセンサーを1ヶ月間身につけてもらう、という実験が行われた。ソシオメーターは顔と顔を合わせて行う交流のデータ(当事者の身元や交流が行われた場所・長さ等)を蓄積する。このデータを解析したところ、新しくクリエイティブなマーケティングキャンペーンを任されたチームは、「情報探索」時の中央集権型コミュニケーションと、他のチームメンバーとの密な会話との間を揺れ動いた。一方で、実施を担当するグループにおいてはそのような揺れは小さく、もっぱら他のチームメンバーとの間だけで会話が行われていた。

というわけで、当然といえば当然なのですが「時と場合で使い分けるのがベスト」という説が唱えられています。またこの「揺れ動き」の大きさとチームの生産性には、正の相関関係が見られたとのこと。しかしソシオメーターなんて身につけながら仕事するの、大変だったでしょうね(ちなみにソシオメーターを使った研究については、ITpro に詳しい記事が掲載されています)。

ネット上ではフラットな関係が当然になり、その流れが現実世界にも押し寄せてきています。「クモ(中央集権型組織)よりもヒトデ(ネットワーク/フラット型組織)の方が強い」という議論も盛んに行われるようになってきていますが、本当に強いのはその両者の強み・弱みを認識して、状況に応じてクモにもヒトデにもなれる組織なのでしょうね。その意味で、組織の構造や情報フローのスナップショットだけに目を奪われるのではなく、組織や人々の行動がどれだけ柔軟か、一定期間の間にどれだけバリエーション豊かなコミュニケーションが行われているか、といった点に注目しなければならないと思います。

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