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New York Times、記事検索APIを公開

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以前から話は出ていたのですが、いよいよ New York Times で同紙の記事を検索できるAPIが公開されました。何と1981年以降に同紙に掲載された280万記事の全てを検索可能とのこと:

Announcing the Article Search API (New York Times)

ReadWriteWeb でも解説記事が掲載されています:

NYTimes Exposes 2.8 Million Articles in New API (ReadWriteWeb)

ちなみに公式ページはこちら。以前から公開されていた議会情報取得API、またベストセラー情報取得APIなどと同様、事前に開発者キーの申請が必要になります。その他、主要なポイントは以下の通り:

  • 1981年以降に New York Times に掲載された記事280万件が対象
  • 記事のセクションやタイトル、公開日など、35項目で検索可能
  • コンテンツは1時間毎に更新
  • AND 検索や OR 検索、また範囲を指定しての検索など、基本的な条件設定が可能

とのこと。また今回のリリースはベータ版的な位置付けであり、今後も改修を行っていく、との力強い宣言がなされています。そして公式発表の締めの言葉は"Go build something"(何か作ってみて!)。Times 側の自信というか、このプロジェクトに賭ける意気込みのようなものを感じます。

「新聞は『紙』と『情報』に分離され、『情報』の方は『紙』以外の媒体を見つけて生き残る」という予想があります。今回、ついに New York Times という有力紙がAPI公開に踏み切ったことによって、その予想に一歩近づいたのかもしれません。例えば、特定のキーワードにマッチする記事だけを iPhone やケータイの上で確認できるようにしたり、最新ニュースに関連する過去記事を即座に表示・読者に問題の背景を分かりやすくさせるなど、様々な可能性が考えられます。そういった「配信」や「集約」「活用」といった分野をユーザーにまかせ、New York Times は「優れた記事の作成」という得意分野に特化することで、同社の価値が高まることも考えられるでしょう。

ただ、まだまだこのAPIが New York Times の収益にどれだけプラスになるかは分かりません。もちろん上手くいって欲しいという期待はありますが、前例のない挑戦ですから、結局体力を消耗しただけという結果に終わる恐れもあるでしょう。しかしいずれにせよ、現在の「新聞」というビジネスモデルが崩れ始めているのは事実。ReadWriteWeb の記事の冒頭にある言葉が、全てを言い表しているように思います:

What do you do when your industry is shifting under your feet? Taking the lead with radical steps is one strategy. Times did just that this afternoon when it announced that it has released a new Application Programming Interface (API) offering every article the paper has written since 1981, 2.8 million articles.

あなたの業界が、足下で変ろうとしていたらどうする?大胆な手を打って、リードを奪うというのが1つの戦略になる。Times が行ったのはまさにそんな戦略だ――今日の午後、同紙は1981年以降の記事280万件を検索できるAPIをリリースすると発表した。

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