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「もっと走れ、もっと戦え、もっとリスクを冒せ」

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「ITmedia」オルタナティブ・ブログでありながら、完全にITを無視した話題を続けるこのブログですが、今回もまったくのオフトピになることをお許し下さい。何と言っても、前日本代表監督のイビチャ・オシム氏が離日する日が来てしまったのですから:

最後までオシム節…熱弁後、貧血で真っ青 (SANSPO.COM)
オシム氏帰国、示した日本愛「ガンバレ」 (nikkansports.com)

ちょうど1年前、オシム氏は新年の挨拶として「新しい年2008年がポジティブなサプライズの年でありますように」と語っています。しかし残念なことに、2008年はサブプライム問題等の「ネガティブなサプライズ」の年となってしまい、さらにオシム氏は日本サッカー協会との契約を延長することなく、自宅のあるオーストリアへと帰国することになりました。もちろん彼と日本サッカー界との関わりがこれで消滅したわけではありませんが、あのウィットに富んだ、時には皮肉めいた名言を聞く機会が減ってしまうのかと思うと、重ね重ね残念です。

飛行機に乗り込む前、オシム氏は熱弁のあまり貧血に見舞われるというトラブルに襲われながらも、こんな言葉を残しています:

そして最後のオシム節。それはサッカーの根源にかかわる提言だ。

 「日本には不必要なプレッシャーを感じる選手がなんと多いことか。どんな結果も悲劇と考える必要はありません。サッカーは楽しむもの。本当の悲劇はサッカー以外の分野や、世界のあちこちで起きている」

(SANSPO.COM)

命を懸けた最終講義は、飛行機に乗り込む直前まで続いた。車いすで搭乗タラップに向かったオシム氏は、右こぶしを振りながら、熱っぽく語った。

 オシム氏 W杯予選終了後の3カ月が、日本にとって大事。W杯本大会でいいプレーをするために、しっかり準備をしなければならない。皆さんも予選突破に満足せず、選手に対して「もっと走れ、もっと戦え、もっとリスクを冒せ」と言い続けてください。

(nikkansports.com)

どんな結果も悲劇と考える必要はない。もっとリスクを冒せ――故郷サラエボが民族紛争という「本当の悲劇」に見舞われ、それでも屈することのなかったオシム氏だからこそ言える言葉かもしれません。しかし彼の言う通り、戦争や災害といった悲劇に比べれば、サッカー上でのミスなど小さなこと。もっと上を目指し、もっと楽しみ、そしてもっとリスクを冒そうというメッセージは、サッカー以外のスポーツやアート、そして仕事の世界にも通じるのではないでしょうか。

自信を失った状況では、どうしても縮小均衡に陥りがちです。失敗を意識して、次の一歩が出ない。その気持ちも分かりますし、当然の感情だと思いますが、それが不必要なプレッシャーになって必要なリスクまで取れない状況になっては悪循環にはまってしまいます。2009年が今度こそ「ポジティブなサプライズ」の年になるよう、この状況を楽しむくらいの気持ちで一歩を踏み出さなくては、などとオシム氏の言葉を読んで感じた次第です。

……ところで、オシム氏が語った「最後の」言葉の中には、こんな一節もあります:

オシム氏 W杯予選を通過すれば、監督の仕事もメディアの仕事も、半分は終わる。では残り半分は? メディアには、W杯本番で何が起きそうなのか、リアルな情報を世間に伝えてほしい。自分たちと相手の力を、客観的に分析できる情報を与えてください。

(nikkansports.com)

状況が客観的に分析できるような情報を与えて欲しい――2009年、この声に応えてくれるマスメディアは登場するのでしょうか?

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