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「読者の声」と向きあう新聞社サイト

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米国の Bivings Group という企業(ウェブを通じたコミュニケーション戦略についてコンサルティングを行う会社とのこと)が、米国の新聞トップ100紙のウェブサイトについて調査をまとめ、発表しています:

The Use of the Internet by America’s Largest Newspapers (2008 Edition) (The Bivings Report)

新聞社のウェブサイトにどのような機能が盛り込まれているか、100紙を調査した結果について(PDFファイルによるレポート全体はこちら)。恥ずかしながら僕はこの調査の存在を初めて知ったのですが、2006年から行われているとのことで、過去の傾向との比較も見ることができます。詳しくは中をご覧頂くのが早いのですが、取り急ぎ以下の2つの表だけでも見ていただけると面白いと思います(どちらもGIF画像へのリンク):

上は2008年度調査の結果で、RSSやモバイル版などといった各機能が100紙中の何紙で導入されているかをグラフで確認できます。下は主要機能について3年分の結果を比較したもので、どの機能が人気を博しているか、あるいは消え去ろうとしているのかを見ることができます。日本ではごく一部でしか見られないソーシャルブックマーク機能が92紙で導入されていたり(しかも2年前はたったの7紙だったので、人気が急上昇していることが分かります)、新たな収入源として期待されていたRSS広告が1紙でしか導入されていなかったり、SNS機能を導入しているのが10紙だけで意外に低迷していたりと、様々な発見があるでしょう。

個人的には、コメント機能の導入が進んでいることに驚きを受けました。(社内の記者や専門家による)ブログでは2年前の67紙から92紙へ、また通常の記事においても2年前の19紙から75紙へと、いずれもコメント欄がごく当たり前の機能になりつつあることが見て取れます。もちろん個々の運営状況を見てみなければ、機能が有効に回っているかどうかの判断はつきませんが、少なくとも米国の新聞社サイトでは「読者の声と向きあおう」という姿勢が一般的になってきているのではないでしょうか(仮に裏にある動機が「同じ記事に繰り返しアクセスする誘引となる」というものであったとしても)。

同じく個人的な話で恐縮ですが、例えばメジャーな新聞社サイトでニュースを読んだ後で、その記事に対するソーシャルブックマークに書かれたコメントを読んだらさらに理解が進んだ(あるいは最初の記事で読んだ感想が覆った)という経験をすることがよくあります。確かにコメントには不作法で非常識なものも多いですが、中には元記事に欠けている情報を補ってくれたり、元記事の誤りを指摘してくれるものもあるわけですね。記事とコメント、合わせて1つの「情報」になる――そんなケースは希ではないと思います。そんな理由で、日本でも米国と同様の流れになると嬉しいのだけれど、と感じた次第です。

日本ではそれがソーシャルブックマークサービスや、Yahoo!やMixiなどのポータルサイト/SNSで実現されているから問題ない、という意見もあるかもしれません。また記事の下にぶら下がるという形ではなく、まったく別のページ/別のサイトに掲載されるというスタイルだからこそ、本音が語れるのだという意見もあるでしょう。もちろん様々な要素を考えなければいけませんが、少なくとも「記事についてウルサイことを言うのは、どっか別の場所でやってくれ」という態度であってはならないと思います。少なくとも、紙媒体で掲載されている読者投稿欄よりは有益なものになると思うのですが……その前に日本の新聞社サイトに求められているのは、まずはパーマリンクの徹底というのが悲しいところです(よく見たら上記のレポートでは、調査項目にすら挙がっていませんね)。

< 追記 >

おっと、最近の日本の新聞社系サイトの動きとしては、これを忘れてはいけませんね:

産経新聞、なぜ無料でiPhoneに 「失敗続き」の電子新聞チャレンジに手応え (ITmedia News)

米国の新聞社も含め、iPhone 対応という部分でも今後面白い動きが生まれてくるはず。ただし産経新聞のアプリは、

アプリの無料配信は「新聞の無料試読制度のようなもの」と位置付けており、いつまで無料で提供するかは未定だ。「なんとか軌道に乗せるため、ビジネスモデルを検討中」で、有料化や新たな広告モデルを探っていく。アプリを使って「来年春までいろんな実験をしたい」という。

とのことで、無料配信は実験的な位置付けのようですね。機能面だけでなく、ビジネスモデルでも革新的なアイデアが生まれると良いのですが。折しも今日、こんなニュースもありましたし……:

NYTimes、生き残りには7倍のトラフィックが必要 (Ad Innovator)

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