バカヤローな就活に、高度外国人材の活用を
昨日は国連大学で行われたシンポジウム「『高度外国人材』のマネジメントを考える」に参加してきました。ご存知の方もいらっしゃると思いますが、政府はグローバル時代を見据え、高度な知識やスキルを有した外国人「高度外国人材」の拡大を打ち出しています。有能な人材は国境を越えて求められるようになり、各国の争奪戦となる――その波に乗り遅れないようにするには、政府や企業、(留学生を持つ)大学はどうすべきか?というのがテーマでした。
シンポジウムでは様々な議論が行われたのですが、その中にこんな指摘がありました:
留学生たちが違和感を感じるものの1つが、日本の新卒採用(就職活動、いわゆる「就活」)。大学3年生の夏ぐらいから始まり、1年半近く拘束されることになる。優秀な留学生を逃したくないなら、就活そのもののあり方を見直すべきだ。
留学生に限らず、社員のダイバーシティをどう維持していくかが課題となっている時代。「高度外国人材を惹きつけるような人材マネジメントはどうあるべきか?」という問題は、必然的に「(社員の国籍や出身国を問わず)理想的な人事制度とはどうあるべきか?」を考えることにつながっていくわけですが、特に昨日のシンポジウムで「日本の人事制度のおかしな点」の1つとして挙げられたのが新卒採用。これもご存知の方は多いと思いますが、1996年に就職協定が廃止されてから、就活は早期化・長期化するようになってきています。パネルディスカッションでは亜細亜大学、東京工業大学の関係者の方々も出席され、「ゼミがまともに行えない」などの弊害を訴えておられました。
残念ながら、僕が就職活動をしたのはもう10年以上も前。就活生の苦労を実感しているわけではないのですが、ちょうどタイミングの良いことに『就活のバカヤロー』という本を読んだところでした。タイトルの通り、日本の就活のおかしさに物申す!といった内容の本で、特に具体的な解決策が提示されるわけではないのですが(問題の核心にメスを入れるというよりも、関係者の証言を広く浅くまとめることに主眼が置かれています)、ここにも「ガラパゴス」とでも呼ぶべき日本独自の慣行がまかり通っている現状を知ることができました。
ガラパゴス就活の全てが悪だとは言いません。見方によっては、長い選考期間も「日本企業がじっくりと学生を選んでいるからだ。様々な選考方法を用意して、門戸を広げて多くの候補者を選考対象としているのも長期化の理由だ」と捉えられるかもしれないですしね(あくまでも見方によっては、ですよ)。しかし大学3年の夏休みが終わると、みな示し合わせたようにリクルートスーツを着て、企業まわりに東奔西走するというのもちょっと異様な姿です。ここらで何か、全く異質なものを導入する機会なのではないでしょうか。
僕はそのきっかけが、高度外国人材の受け入れ、直接的には留学生の積極採用になるのではないかと期待しています。まずは「留学生枠」のような名目で別の選考プロセスを用意し、現状の「就活」とは異なる過程で、異なる人材を採用する。それが回り始めたら、対象を留学生だけではなく、一般の学生たちにも適用していく。なんだか外圧みたいな話ですが、日本人同士だとどうしても横並びになってしまう体質を持つ私達には、「いやぁ、留学生のための特別制度ですから」という名目で始めるというのは意外と効果的かもしれません。
ただ現状はというと、多くの企業で「外国人だからといって特別な対応はしていない」という状況であり、厚生労働省も「まずは現状の就職活動プロセスで留学生が不利にならないようにサポートする(要は日本社会ではなく留学生の方に適応してもらう)」という対応を進めているそうです。それでは「日本人のような外国人」の流入を拡大することはできるかもしれませんが、「日本人にはないスキルや考え方で革新をもたらす」という高度海外人材活用の本来の目的は達成できないでしょう。少なくとも就活ぐらいは留学生への配慮を深め、彼らに「バカヤロー!」と言ってもらえるような状況になって欲しいと思うのですが。