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決して最先端ではない、けれど日常生活で人びとの役に立っているIT技術を探していきます。

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このエントリは、ブログ・アクション・デイ(Blog Action Day)2008の一環として書いてみました(Polar Bear Blog での解説はこちら)。

「見ざる・言わざる・聞かざる」という諺があります。本来は「悪を見るな・悪を言うな・悪を聞くな」という教えで、「~しない」という行為を行う方が正しいという意味なのだとか。しかし現代では、「臭いものに蓋」的な意味で、問題を無視するといった場合にも使われますよね。それではこの諺を次の事例に使うとしたら、果たしてどちらの意味が示唆されるのでしょうか:

ゲーテッド・コミュニティ (Wikipedia)

上は Wikipedia のリンクですが、実は今週月曜日(10月13日)の朝日新聞に、日本でもこの「塀で守られた街」が一般化しつつあることが解説されていました(こういった記事こそ、サイトにアップすればいいのに!)。

「城門を築きました」「門の向こうを、街はしらない」――。こんな言葉で、ゲーテッド型を売り物にするマンションが首都圏で相次ぎ誕生している。

(中略)

公団住宅跡地にセコムホームライフなどが建設中の「グローリオ蘆花公園」(9棟363戸)も外周をフェンスとワイヤセンサーで守り、監視カメラは120台以上。

同社は00年以降、ゲーテッド型のマンションを首都圏で12物件建ててきたが、前面に出してPRするのは今回が初めて。開発本部の塩入修・副本部長は「治安悪化という欧米と同じ過程を経て、日本でもニーズが高まった。(宣伝文句に使うことに)迷いはなかった」。

など、日本でもゲーテッド・コミュニティが登場するだけでなく、それが積極的に評価されるような空気が流れ始めたことが紹介されています。確かに治安というのは無視できない問題で、個人的にも、危険な場所より安全な場所で暮らしたいという願いは理解できます。しかしゲーテッド・コミュニティという形でそれを達成しようというのは、何か違和感を感じる――そのもやもやした思いが、続く文章の中ではっきりと指摘されていました:

問題点を指摘する声は少なくない。クリントン政権で労働長官を務めたロバート・ライシュ氏は富裕層や成功者の社会からの離脱だと指摘。社会政策への無関心や、公共サービスの縮小につながる恐れがあると警鐘を鳴らした。

(中略)

公共性の観点から注目する齋藤純一・早大教授は(政治思想)は、「生活習慣や価値観が異なる他者との相互理解には、時間的にも精神的にもコストがかかる。効率を優先し、格差拡大を当然視する現代日本の象徴的な変化だ。学校や買い物などの場所でも分断が進めば、他者とじかに接触する機会が減り、共有すべき社会問題への関心も薄まる恐れがある」と懸念する。

繰り返しますが、治安を気にするというのは人として当然の感覚だと思います。そのために塀を設けて、不審者を排除しようというのはある意味でもっともな手段でしょう。しかしその塀を犯罪者から身を守るだけでなく、様々な社会問題との関わりを避けるものとして使ってしまったとしたら。この「見ざる・言わざる・聞かざるシティ」は、臭いものに蓋をするという行為の象徴となってしまうのではないでしょうか。(しかもゲーテッド・コミュニティが立ち入り禁止区域を作ってしまったために、古くから地元にあるコミュニティが分断されてしまうというケースも出ているそうで、そうなれば問題を無視するだけでなく悪化させる存在になりかねないと言えるでしょう。)

以前「隣人祭り」という運動があることをご紹介しましたが、そこでは社会問題を解決する基盤として、積極的に地域住民の間で繋がりを持とうという働きかけが行われていました。ゲーテッド・コミュニティが犯罪者の排除だけを目的としているならば、この「隣人祭り」とは相反しない存在になるはずです。しかし実際には、この2者は対極に位置されつつあるのが現状ではないでしょうか。社会問題から遠ざかろうという動きと、積極的に関与しようという動き。両者が同時に盛り上がってきたというのは、ある意味でそれだけ様々な問題がまったなしの状況に置かれていることを意味しているのではないか、そんな風に感じました。

ちなみに記事では、入居者のこんなコメントが紹介されています:

フェンスの外には新興の住宅地が広がる。夫婦に尋ねてみた。「外の人との交流はありますか?自治会とか」

2人は顔を見合わせ、男性が「外出も車で行くし……(自治会が)あるのかも知らない」。生活ごみは敷地内の集積所に置いておけば、管理人が市の収集日に所定の場所に出してくれる仕組みだ。

「成功すれば、他人との煩わしいやりとりから開放される」――まさしく目と耳と口をふさいだサルのように、外部とのコミュニケーションを拒否するのがゲーテッド・コミュニティが求められる理由だとすれば、社会問題は解決が難しくなる一方なのではないか。そんな危惧を感じます。

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※写真は横浜トリエンナーレに出品された作品、シルパ・グプタさんの「見ざる、言わざる、聞かざる」
アキヒト

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小林啓倫

小林啓倫

株式会社日立コンサルティングの経営コンサルタント。WEBサービスの企画・運営、新規事業の立案などに携わる。個人でPOLAR BEAR BLOGも執筆中。

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