敵を語れ/敵を語るな
ご存知の通り、民主党のオバマ候補 vs. 共和党のマケイン候補で争われることになった米国の大統領選挙。ネット時代ということで、両陣営は共にブログを開設しているのですが、それを分析すると面白い結果になることが Boston.com で紹介されています:
■ Portrait of the candidate as a pile of words (Boston.com)
オシャレなタグクラウドを生成してくれるサービス"Wordle"を使って、両者のブログのタグクラウドを比較したもの。残念ながら Wordle を Firefox 上で実行することができなかったので、Boston.com の画像を転送させていただくと:
こんな感じ(上がマケイン候補、下がオバマ候補の分)。オバマ陣営は"change"や"hope"などお馴染みの言葉を使っていることが、対するマケイン陣営は"hospital""Pentagon"などの単語を使っていることが見て取れます。
しかし最も明白なのは、両者の相手陣営に対するスタンス。どちらのタグクラウドでも、最も大きく表示されている単語=最も頻繁に登場する単語は"Obama"であることが一目瞭然ですね。ところが面白いことに、オバマ陣営のブログには"McCain"という単語は見あたりません(よく目を凝らして見てみたのですが、見つけることができませんでした)。つまりマケイン・ブログでは積極的に「敵」について語っているのに、オバマ・ブログではほとんど無視を決め込んでいる、と。もちろん候補者名を出さなくても相手陣営の政策を攻撃することはできますし、ブログ以外の場面(公の場でのスピーチなど)では「マケイン」と口にしているかもしれません。しかしブログ上ではっきりと傾向が分かれていることは、注目に値するのではないでしょうか。
敵を語るマケイン候補と、自分語りに徹するオバマ候補。どちらの戦略が正しいかは一概には言えませんし、それぞれに適したスタイルというものもあるでしょう。また「変化」というポジションを明確に打ち出した/打ち出しやすいオバマ候補に比べると、マケイン候補はどうしても「キャラ立ち」させ難い――従って有権者に自らを売り込む際、オバマ陣営は対立候補を必要としない一方で、マケイン陣営は「競争相手と対比することで自らのポジションを確立する」という戦略に打って出ざるを得ない、と解釈することも可能かもしれません。コーラに例えて言うなら、どこまでも我が道を行くコカコーラと、比較広告などで盛んにコカコーラと敵対しようとするペプシの争い、といったところでしょうか?
いずれにせよ、両候補はどのように有権者とコミュニケーションしようとしているか?という視点でも、米大統領選を楽しむことができるというわけですね。もちろん米国という超大国の指導者争いですから、日本人といえども楽しんでばかりではいられないのですが……。