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第2の「Google ストリートビュー問題」を防ぐために

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インターネット先進ユーザーの会(MIAU)が行った、「Google ストリートビュー」の問題点を考えるシンポジウムの記事が公開されています:

「Googleストリートビュー」は何が問題か――MIAUがシンポ (ITmedia News)

ストリートビューに関しては、これまでネット上で様々な「問題点」が提示されていますが、シンポジウムでも様々な視点から議論が行われたようです。プライバシーに関する話から法律論、また「気持ち悪い」という感覚論まで、既出の意見が網羅されているという印象。ただそれだけに、「詰まるところ、何が問題なの?」という質問には答えられていない感じを受けました(あくまでも、この記事を読んでの個人的な感想です)。

例えば、いちばん白黒の決着がつきそうな法律論でも、

ストリートビューが社会的・法律的に受け入れられるかどうかについて壇さんは「まだコンセンサスがない」と話す。

 「例えば、根拠なしに人の家を盗撮するのは社会的にも法律的にもアウトだが、犯罪行為を行っている人を見つけて証拠保全するための撮影はOK―― という基準になっている。だがストリートビューは機械的に撮っており悪意はない。何の意図もないものについて、どうするかのコンセンサスは、おそらくない」(壇さん)

 民事訴訟でどうなるかは「撮影されることによる被る不利益と、撮影によって起きるいいことの比較衡量で決まる」という。似た例としては、写真週刊誌の記事がプライバシー侵害で問題になることもあるが、「一定の主観的な編集方針が問題になることが多く、ストリートビューは無機質に全部とらえるという点で異なる」と壇さんは話す。

とのこと。白とは言えないが黒に含めるわけにもいかない、いわゆるグレーゾーンにあるという印象を受けます。また恥ずかしながら、既に日本にはストリートビューに似たサービスが存在していたそうなのですが、

ストリートビューに似たサービスは日本にもすでにある。「Location View」が代表例だ。運営するロケーションビューから話を聞いた中川さんによると、スタートから2年経ったが、同社には苦情は1件も来ていないという。

 人の顔や車のナンバーを自動認識技術でぼかしているGoogleと異なり、ロケーションビューでは目視で削除しているという。こういった“日本的な細かい気配り”が問題を回避しているのでは、と中川さんは指摘する。

とのことで、「じゃあ『日本的な細かい気配り』ができれば問題なくなるのだとして、『日本的な気配り』って何だろう?」とますます訳が分からなくなってきます。

仮に「公道で写真を撮り、ネットで不特定多数に公開することは是か非か」という点に法律上の答え、あるいは社会上の慣習といったものがあれば、当然ながら今回のような騒動は起きなかったでしょう。ダメならダメ、許されるなら許されるで、激しい議論には発展しなかったはずです。しかし実際には、(ロケーションビューさんには申し訳ないですが)Google のような巨大企業が、力業であらゆる道路を撮影、ネットにアップするということがこんなに早く起きるとは誰も思わず、何の法整備・社会的合意の形成も行われていませんでした。つまり問題の一端は、Google が私たちの予想を遙かに上回る速度で、先進的なサービスをリリースしている点にあるのではないでしょうか。

一部で「私道に立ち入って撮影した」など明らかにNGと思われる行動もあるものの、個人的には、Google ストリートビューには「社会を混乱させよう」といった類の悪意はないと考えます。しかし Google という企業が抱いている倫理観は、恐らく非常に先進的・異質なものであり、「これくらいは許されるだろう」という範疇がズレているのでしょう。それすらも悪だ、もっと「一般的」な認識に配慮すべきだ、という意見も当然あるでしょうが、一方で私たちの想像を超える技術・サービスを作り出すのも価値のある行動です。求められているのは、技術やサービスの発展を手がける人々と、その外側にある社会で、常に合意が確立されいるように努力することではないかと思います。

生命倫理学」という学問があります。生命に関する科学がすさまじいスピードで発展してしまい、社会的合意が得られる前に「クローン」などといった存在が現実のものになってしまっていることはご存知の通り。科学の進歩を妨げないようにしつつ、何が許容されるべきかという新しい倫理観を形成するのが「生命倫理学」の存在意義の1つだと理解していますが、ネットの分野にも「ネット倫理学」とでも呼ぶべき活動が求められているのではないでしょうか。そんな大仰な名前でなくても良いのかもしれませんが、個々の問題に気を取られていると、第2・第3の「Google ストリートビュー問題」が起きてしまうような気がします。

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