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決して最先端ではない、けれど日常生活で人びとの役に立っているIT技術を探していきます。

悲惨な事件が起きる度、原因としてやり玉に挙げられてしまうビデオゲーム。「子供が暴力的になる」「空想と現実が分からなくなる」「他人の痛みに鈍感になる」等々、散々な言われようですが、この度強力な援軍(?)が登場しました。それはハーバード・ビジネス・レビューの最新号に掲載されている論文「オンラインRPGは『協働する組織』の実験場」です:

冒頭にはこんな一文が掲げられています:

仕事の内容に応じて、それにふさわしい能力とスキルを備えた人材が、組織の壁を超えて参集し、そこにはリーダーがいるとはいえ、各人が状況に応じて、自律的に臨機応変に行動する――。ITの黎明期、このようなバーチャル・コラボレーションが提唱されたが、4半世紀以上経った現在にあって、いまなお理想の域を出ない。ところが、「MMORPG」(多人数参加型のオンライン・ゲーム)の世界では、理想のコラボレーションが実現しているという。筆者らはIBMからの依頼で、このMMORPGのなかで起こっているリーダーシップやチームワークを調査したところ、積極的なリスク・テイキング、状況適応的なリーダーの交替、金銭以外のインセンティブ、透明な環境での情報共有等、近未来のビジネス環境のワーク・スタイルを垣間見ることになった。

実はこの「オンラインゲームはマネジメント・スキルを養うのに役立つのではないか?」という説、以前から所々で唱えられているので、耳にしたことがある方も多いかもしれません。今回の論文は8ヶ月をかけてMMORPGのベテラン/有名プレーヤー達の行動を調査したもので、この説がどこまで正しいかを詳細に検証しています。しかも執筆者の一人は、『フューチャー・オブ・ワーク』のトーマス・マローン教授(といってもご存じない方が多いと思いますが、2006年に行われた「世界情報通信サミット」でもキーノート・スピーチを務められたりしています)。ゲームという観点だけでなく、リーダーシップやチームワークの論文としても興味深いものでしょう。

なぜMMORPGがマネジメント・スキルの養成に役立つのか。論文ではMMORPGと現代のビジネス環境の類似点として、以下のようなものが挙げられています:

  • 激しい競争が行われており、状況がめまぐるしく移り変わる。
  • 変化に迅速に対応するため、重要な意思決定が組織のあちこちに分散されている。
  • プロジェクトはグローバル・チームによって進められるが、地理的に分散したメンバーは顔を合わせることはなく、必然的にデジタル環境での協力が求められる。
  • リーダーは文化の異なるメンバーを採用し、評価し、やる気にさせ、報い、維持しなければならない。

などなど。確かに目的が「怪物を倒す」なのか「市場シェアを奪う」なのかという差はありますが、チームやプロジェクトの運営という点では両者は共通しており、ゲームをプレイすることでマネジメント・スキルが養われるというのもある意味当然のことでしょう。実際、ゲームの中で学んだスキルがビジネスでも役だった、という感想を持つプレーヤーも多いようです(余談ですが、僕もMMORPGにハマっている経営者の方を何人か存じています)。

単刀直入に申し上げれば、MMORPGは、現代におけるリーダーシップシミュレーターであり、しかも気軽に経験できるばかりか、きわめて現実的でもある。

実際、このオンライン・ゲームをリーダーシップ育成プログラムのなかに組み込み、リーダーシップの「ソフト面」を教える一方、分析技術といった「ハード面」を強化するシミュレーション・ツールとちても利用できる。

論文で述べられている結論の1つです。冗談ではなく、「ワールド・オブ・ウォークラフトでギルドを率いた経験がなければ、経営陣に加えることはできない」などという判断を下す企業が珍しくなくなるかもしれません。

外圧に弱い日本ですから、仮に海外でそんな企業が出てくれば、マスコミの評価は一変するかも。「いまどきのビジネスマンは、ゲームで経営を学ぶ!」「ゲームでエグゼクティブの座を狙え!」などといった記事が目白押しになったりしてね。要は表面的なもの(MMORPGだって、その多くは「暴力的」な内容を含んでいます)で評価を下すのではなく、実際にプレイする人々が何を経験し、何を得ているかを冷静に判断してくれるようになって欲しいものですが。

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小林啓倫

小林啓倫

株式会社日立コンサルティングの経営コンサルタント。WEBサービスの企画・運営、新規事業の立案などに携わる。個人でPOLAR BEAR BLOGも執筆中。

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