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決して最先端ではない、けれど日常生活で人びとの役に立っているIT技術を探していきます。

「秋葉原通り魔事件を人々がどう伝えたか」という問題について、もう1つコメントしておきたいことがあります。僕自身、これまでほとんど意識してこなかったことなのですが、次の記事を読んだのがきっかけでした:

秋葉原通り魔事件 現場に居合わせた者の主観的記録 (筆不精者の雑彙)

この事件を報じた多くのブログ記事とは異なり、写真は一切入っていません(bokukoui さんによる手書きメモの画像だけ)。その理由について、bokukoui さんはこう書かれています:

小生は今日はたまたまカメラを持ち合わせませんでしたし、また写真を撮るというのもあまり適切な行為とも思われず(不謹慎云々という小生らしからぬ殊勝な思いもありますが、そもそも下手に写真を撮っても何がどう起こったのかうまく伝えるのは難しそうで、かえって画像に印象を制約されてしまいそうで)、そこで何が起きたのか振り返ってまとめようと思いました。

「写真を撮ってもうまく伝えるのは難しく、かえって画像に印象を制約されてしまう」という点。僕はふだん何気なく写真を撮り、ブログにアップしてしまうのですが、この箇所を読んで考えてしまいました。もしかしたら(意図的でなかったとしても)、写真によって読者の印象を左右するということがあったのかも。

実は最近『フォト・リテラシー』という本を買って放置していたのですが、この記事を読んであわてて読み始めました。内容は写真史を追いながら、文字通り「写真の読み方」を問い直すというもの。その中に、「作為的な加工は論外として、果たして写真は現実の正確な再現なのだろうか?」という疑問を呈示した箇所があります:

写真が「選択の芸術」と称される所以、それは現実の一場面が、一枚のプリントとして手許に届くまでの諸段階の存在にある。ここではつい先年まで一般的であったアナログカメラの銀塩写真について考えてみよう。

  1. 現実を、ファインダーで切り取る。
  2. ネガフィルムからコンタクトシート(密着印画)を作成し、その中から焼き付けに回す画像を「選ぶ」。
  3. プリント時に、トリミングなどをして、映像の構図を「選択」する。
  4. さらにプリント時には用紙の種類や大きさ、濃淡や諧調など、あたかも版画制作のような微細な作業と美的判断、つまり美的「選択」が介入する。
  5. 写真が展覧会に出品される時の作品「選別」。
  6. 写真が雑誌や写真集に掲載される時には、再び印刷工程が介在し、さらにページ内での位置や順序、キャプションの有無などの「選択」がなされる。

やや強調しすぎの感もありますが、確かに写真が写真として人々の目に触れるまでには、こういった「選択」が存在していることを思い出さなければなりません。デジタルカメラ、そしてブログによるジャーナリズムの場合には(2)(4)(5)は関係ありませんが、逆に銀塩写真以上に「補整」や「加工」が簡単になるでしょう。どうしても「写真」と聞くと、実際にあった風景をそのまま見ているような感覚に捕われてしまいますが、写真は文章と同じぐらい恣意性を含んでいるわけですね。

さらにもう1つの例を。これも偶然、昨日観たテレビ(BBCが作成した、芸術とキリスト教との関係を追うという番組)で解説されていたことなのですが、まずはこちらの写真をご覧下さい:

Vietnam Napalm

有名な写真なのでご存知の方も多いでしょう。ベトナム戦争中、ナパーム弾による攻撃から逃げようとする少女。まさに悲劇としか言いようのない写真ですが、この姿が「磔にされたキリスト」を連想させ、悲劇性を増幅させる(あくまでもキリスト教の下地を持つ人に対してのみですが)ことが指摘されていました。もちろんこの状況は悲惨なものであり、殺戮を肯定するものではありません。しかし仮に、ここに写っているのが逃げまどう男性兵士の姿だったらどうだったか。さらに言えば、この写真が「選択」されることはなく、人々に公開されたのが「手を十字に広げて横たわるアメリカ兵の遺体」だったらどうなっていたか。そういった可能性も考えて写真を世に送り出す、あるいは発表された写真を見る力が必要なわけです。

フォト・リテラシーの必要性。言い換えれば、冒頭の bokukoui さんの言葉にある「写真を撮ってもうまく伝えるのは難しく、かえって画像に印象を制約されてしまう」という点を、僕ら一人一人がもっと意識しなければいけないのではないでしょうか。

ちょうど昨日、ITmedia に「差別表現 ブロガーも問われる責任と人権感覚」という記事が掲載されていました。あらゆる人が自分の意見をネットに載せることができる時代、報道関係者だけでなくブロガーも差別表現について考えなければならないという内容ですが、意識すべきなのは差別表現だけではないでしょう。昨日も書いたような報道行為の倫理観の問題、また上記のようなフォト・リテラシーの問題などを、誰もが考えなければならない時代が既に到来しているのだと感じています。

アキヒト

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小林啓倫

小林啓倫

株式会社日立コンサルティングの経営コンサルタント。WEBサービスの企画・運営、新規事業の立案などに携わる。個人でPOLAR BEAR BLOGも執筆中。

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