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学校裏サイトは「深刻な状況」なのか?

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先日のエントリでも少しだけ触れたのですが、いわゆる「学校裏サイト」について文部科学省が行った実態調査を基に、「深刻な状況が明らかになった」などとする報道が出ています:

学校裏サイト、9割が「2ちゃんねる」型 文科省初調査 (asahi.com)

いじめなどの温床になっているとされる「学校裏サイト」について、文部科学省は15日、初めて行った実態調査の結果を公表した。抽出調査では、「キモイ」など「誹謗(ひぼう)・中傷」する言葉を含むサイトが全体の50%にのぼるなど、中高生を中心にした裏サイトの深刻な実態が明らかになった。

ちなみに ITmedia での記事はこちら。これらを読んで、「何だと、学校裏サイトの半分が問題なのか!これでは規制も当然だ!」と感じてしまう方も多いでしょう。しかし本当に「深刻な状況」なのでしょうか?

僕が最も不自然に感じたのは以下の部分です:

さらに同じ3県の中高生を対象にアンケートを実施。裏サイトを「知っている」は33%、「見たことがある」は23%だった一方、回答した1522人のうち、学校裏サイトに「書き込んだことがある」は3%だった。

政府の発表を鵜呑みにするとして(これは朝日新聞も同様ですからご容赦いただけるかと思います)、「書き込んだことがある」のはたったの3%。そのうち本当の意味での問題発言を行ったことがあるのは、もっと少ないはずです。中高生が100人いるとして、裏サイトに陰湿な書き込みをしているのは一人か二人、それで「裏サイトは悪の巣窟だ」などと捉えてしまうのは少々早計ではないでしょうか(ちなみに「米国の成人の100人に1人が服役などで拘束中」とのことですから、このロジックでいけば米国の成人の日本入国はフィルタリングした方が良い、ということになりそうです)。

次に多くの方が感じられているのが、文脈の問題でしょう。あまり歓迎すべきことではないのは確かですが、最近では「ウザイ」「死ね」などの言葉を使うのは(特にネット上では)普通のことです。文部科学省の発表は、単にネガティブな単語が学校裏サイトの約半数で見られた、ということを指摘しているに過ぎません(逆に残り半分では「ウザイ」などの発言が一切無かったということですから、大人社会に比べて子供たちはなんと純粋なことか!と言えるような気もします)。はたしてそのうち、「ネガティブな文脈」が見られたサイトはどのくらいなのでしょうか?さらにその攻撃対象が身近な人々ではなく、傍若無人なオヤジやオバサン、政府や新聞などだったケースはどのくらいなのでしょうか?

一方、何にでも長所と短所があるものです。ITmedia の記事でも過去に取り上げられていますが、例えば最近も日経トレンディネットの記事などで、子供たちが携帯電話のネットを通じて豊かなコミュニケーションを育んでいることが指摘されています。ごくごく一部に問題のある生徒や、子供を騙そうとする大勢の大人たちがいるからといって、すべてを潰してしまおうというのは「何だかよく分からないな、面倒だから使わせないようにしちゃえばラクだよ」という態度と変わりないように思います。

文科省青少年課は「今後も必要な調査を続け、他省庁と連携して子どもを有害サイトから守るフィルタリングなどの対策に取り組みたい。保護者や学校もサイトを直接見て、実態を認識して欲しい」としている。

繰り返しますが、この部分はまさしく朝日新聞の言う通りです。しかし実体を認識して欲しいというのであれば、不安を煽るような偏った報道をするのではなく、プラスの側面も考えるなどの冷静な分析が必要ではないのでしょうか。そして保護者や学校は、安易な報道に踊らされることなく、子供たちがケータイをどのように活用しているのか見守る必要があるでしょう。

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