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もう「数学なんてよく分かりません」では済まされないこと教えてくれる『数学で犯罪を解決する』

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『数学で犯罪を解決する』を読むクマ

数学で犯罪を解決する』を読了。アメリカの人気テレビドラマ「NUMB3RS 天才数学者の事件ファイル」の数学コンサルタントを務めた方々が、その元となった「数学を犯罪捜査に応用する」という現実をリアルに描いた本です(ちなみにテレビドラマの方を観ていなくても十分に楽しめる内容)。同じく数学を現実世界の問題解決に活かすことをテーマにしているという点で、『その数学が戦略を決める』や『まぐれ』などと同じカテゴリーの本と言えるでしょう。これらの本よりも数学が具体的に解説されているため、「お風呂につかりながらゆっくりと読む」というのは難しいのですが、特に『その数学が~』が面白いと感じた方にはオススメだと思います。

「NUMB3RS」の放映時、「こんな風に数学を捜査に使えるものなの?」という疑惑の声(?)が視聴者から上がったそうですが、本書はそれが全て現実に近い話(テレビドラマという制約上、多少の脚色はあるものの)であることを示してくれます。統計や暗号といった比較的想像しやすい分野から、IT系の方々にはお馴染みのベイズ推論、ネットワーク分析など、紹介されている事例も様々。読んでいるうちに、「犯罪捜査に応用できるなら、自分の仕事でもいつか使えるんじゃないか」という気分になってきます。

実際、本書でも紹介されているオペレーションズ・リサーチなどは経営の分野でも広く活用されていますし、自分で数式を作ることができなくとも(白状しますが、僕はこの本に登場する数式の半分はよく理解できませんでした)「こういう発想で数学が使える」ということを知っていると知らないのでは大きな差が出てくると思います。話は逸れてしまいますが、大学で統計を学んだ際、教授から「計算式まで覚えておけとは言わない。必要になれば、細かい作業はプロに頼めるからだ。しかしどうしてこういう使い方ができるのかという仕組みを把握しておかないと、いつ使うべきかも分からなければ、何が正しい使い方なのかも分からない(悪徳コンサルに騙されないように!)」と言われたことを思い出しました。

さらにこの本を読んでいると、「もしかしたら、競争相手は既に数学を使い、私たちの知らない勝利の方程式を導き出しているかもしれない」という気にさせられます。それに対抗するには、自分たち自身も数学で理論武装するしかないでしょう。さもなくば、「なんで○○は最近あんなことをしてるんだ?理解できないなぁ」で終わってしまうはずです。むしろ本書に沿った例えをすれば、「完全犯罪だったはずなのに、どうして僕が犯人だって分かったんだろう?理解できないなぁ」と牢獄の中で後悔して過ごす、といったところでしょうか。

本書の最後、ギャンブルを扱った章のラストで、数学知識を活用してブラックジャックで大儲けする学生たちが登場します。彼らはかつて勝ちを収めたカジノに再び立ち寄り、プレイしようとするのですが、ピットボス(ディーラーの総監督)が登場して彼らに「出入り禁止だ」と告げます。そして:

わが生徒が、ありったけの無邪気さを装って、自分と友人は単純にブラックジャックがしたいだけなのに、どうしてカジノはそれはそれをダメだと言うのかと尋ねると、ピットボスはこう言ったそうな。「お二人はすでにうちから700ドルほど儲けてますな。これ以上は儲けさせませんよ」。一ヶ月も間をおいて、しかもたった700ドルの勝ちのためとは。カジノは自分が儲けるためには数学に頼るが、他の人が同じことをすると、インチキ呼ばわりするわけだ。

ギャンブルという一つの事例に過ぎませんが、もう「数学なんてよく分かりません」では済まされない、既に競争相手は数学を武器として使っており、私たちにそれを使わせまい・悟らせまいとしているのかもしれないのだから、とメッセージを強く感じた締めでした。
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