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決して最先端ではない、けれど日常生活で人びとの役に立っているIT技術を探していきます。

今さら映画『Matrix』の話、というわけではありません(あの映画はやはり、1作目だけで終わりにしておくべきだったと声を大にして言いたいのですが)。最近登場するウェブサービスを見ていると、いくつか発想が似ているものがあることが分かります。まずはこちら:

While-you-wait editing service (Springwise)

紹介されているのは Gramlee というサービス。書いた英文を貼り付けて「投稿」ボタンを押すだけで、人間のオペレータが添削し、メールで返却してくれるというもの(所要時間は約2時間とのこと)。料金はチェックを依頼した文章の長さによって決まるのですが(価格表はこちら)、最低料金だと150単語で1ドル。ちなみに上記の Springwise の記事本文は272単語ですから、この長さを添削してもらったとしても、たった2ドルで済みます。

この「ウェブからタスクを依頼すると、裏側で(機械ではなく)人間がタスクを実行し、結果を返してくれる」というサービス、他にも様々な事例を探すことができます:

  • 英語でテキストを入力すると、即座に人間のオペレータががスペイン語・中国語に翻訳してくれるチャットサービス"SpeakLike"(参考記事) 
  • 人間のオペレータが検索作業をサポートしてくれる検索エンジン"ChaCha"(参考記事

そしてもちろん忘れてはいけないのが

ですよね。実際に Mechanical Turk を利用して、10,000匹の羊の絵を描いてもらい、それを売るという"The Sheep Market"なるサイトまで登場しています(参考記事)。

このように、既にネットの世界では、見かけ上「機械と人間がシームレスに結合している」という状態が実現されているようです。この現象について、Nicholas Carr が"The Big Switch: Rewiring the World, From Edison to Google"で面白い表現をしています:

As Amazon explains on its Web site, Mechanical Turk stands the usual relationship between computers and people on its head: "When we think of interfaces between human beings and computers, we usually assume that the human being is the one requesting that a task be completed, and the computer is completing the task and providing the results. What if this process were reversed and a computer program could ask a human being to perform a task and return the results?" That's exactly what Mechanical Turk does. It turns people's actions and judgements into functions in a software program. Rather than the machine working for us, we work for the machine.

アマゾンがサイト上で説明しているように、Mechanical Turk は通常の人間とコンピュータの関係を逆さまにしたものである。「人間とコンピュータの間のインターフェースを考えた場合、通常は人間がタスクを依頼し、コンピュータがそれを実行して結果を返す、という関係性を想像します。仮にこの関係が逆になって、コンピュータが人間にタスクを依頼し、人間が実行して結果を返すという風になったらどうなるでしょうか?」それこそ、まさに Mechanical Turk が行っていることだ。Mechanical Turk は人間の行動と判断を、プログラムのファンクションの一部としている。機械が私たちのために働くというよりも、私たちが機械のために働くのだ。

そしてさらに進んだ例として、お馴染み Google の PageRank を挙げています。これは人間が行った「ハイパーリンクを付ける」という行為をコンピュータに分析させているわけですが、コンピュータの側から見れば「ウェブページの評価をするために、人間に考えさせて、返ってきた結果を基に計算する」という風に考えられるわけですね。意識的にウェブサービスのために働く(上記の ChaCha のオペレータになる、など)ということをしなくても、無意識のうちにネットに組み込まれているということまで起きているわけです。

それが哲学的・論理的に良いことか悪いことかは別にして、「人間のチカラをコンポーネントのように使う」という発想のウェブサービスは今後も増えていくことでしょう。そしてそれによって、「ウェブを介して労働力を提供する」「ウェブサービスの一部となる」という行為が一般的なものとして受け入れられるようになると思います。「こういうサービスを作りたいんだけど、この部分をプログラムで自動化できないんだよなぁ」という場合には、その部分を「人力」というモジュールに任せることができないか、と考えてみるのが良いのかもしれません。

アキヒト

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小林啓倫

小林啓倫

株式会社日立コンサルティングの経営コンサルタント。WEBサービスの企画・運営、新規事業の立案などに携わる。個人でPOLAR BEAR BLOGも執筆中。

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