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「ケータイチルドレン」だけでなく「アナログアダルト」の教育を

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石野純也さんの『ケータイチルドレン』を読了。副題に「子どもたちはなぜ携帯電話に没頭するのか?」とあるように、若い世代がケータイとどのように付き合っているのか、を考察する内容です。

石野さんが書かれた他の本を読んでいたので、本書にも期待していたのですが、これまでと比べ若干驚きが少ないような印象を受けました。ITmedia の読者の方々にとっては、「ああ、やっぱりね」と思うような内容がまとめられている感じ(もちろん現状のまとめとしての価値は十分にあります)。ただしこの点については、「おわりに」の部分で

なお、本書は主な読者として、ケータイ世代の親となる多くの方々を想定している。SNSやブログといった、コンピュータに通じた人には当たり前の用語も詳しく説明しているのはそのためだ。

と解説されているので、ITmedia に関心がないような普通の人々(決して ITmedia 読者が普通ではないなどと言うつもりはありませんが)向けの内容だと思えば納得がいきます。

その意味で、この本は「ケータイチルドレン」を知るための書、というより「アナログアダルト」を啓蒙するための書、と捉えられるかもしれません。実際、本書は「ケータイなど悪だ、不要だ」というスタンスではなく、「若者にとって欠かせない存在となっており、よく知りもしないで規制するのは問題だ」という視点で書かれています。もちろん携帯電話の問題点も取り上げられており、バランスの取れた内容になっています。

中でも僕が「まさにその通り」と感じたのは以下の部分でした:

かつて、「いじめ、かっこ悪い」というコピーで、いじめをしている側を啓蒙するキャンペーンが展開されたことがあった。ことケータイに関しては、いつも「子供を守る」視点の活動だけが行われがちだが、正しくしていく必要があるのは、いい年になっても分別がつがず、子どもだちの遊び場を無神経に荒らす大人のほうだ。

子どもたちにインターネットの危険性を教える一方で、「子どものサイトを出会い系にするのは情けない」と周知させなければ、こうした事件が減ることはないだろう。

例えば現実の世界で「公園に変質者が出るから」「公園の中でイジメられる子供が生まれるから」という理由で、子供達が公園に行くことを一律に禁止してしまうでしょうか。仮にそんなことをしたら、「取り締まるべきは変質者の方だ」「公園があるからイジメが起きるのではない」「子供達が公園に行けなくなったら、子供達の楽しみや成長の機会を奪い去ることになる」という声が上がるでしょう。それと同じ反応が、携帯電話フィルタリングの問題でも出てきて欲しいと思います。

そのためにも、こういった世代間のギャップを埋める本がもっと登場してきて欲しいですね。現状では、まだまだ「うちでは携帯電話は与えません、それで問題解決!」というような論調が「アナログアダルト」の間では大手を振って歩いていますから。

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