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決して最先端ではない、けれど日常生活で人びとの役に立っているIT技術を探していきます。

何かを考える場合は、情報ができる限り得られる状況の方が良い――とは限らない、という実験結果が出たとのこと:

 

Good Ideas Distract Groups From Generating Great Ideas (ScienceDaily)

 

インディアナ大学の Robert Goldstone 氏による実験について。まずはどんな内容だったのかをまとめると:

 
       
  • 被験者を集め、バーチャル環境上でゲームを行ってもらった。
  •    
  • ゲームの内容は「1から100までの数字を指定する。それぞれの数字にはポイントが隠されていて、指定した数のポイントが得られる。それを何ラウンドか行い、合計得点の高さを競う」というもの。
  •    
  • ただし数字とポイントの関係は一定ではなく、単純に推察可能なものから、複雑なものまでゲームによって変化させた。
  •    
  • 被験者は3つのグループに分けられた。      
            
    • 第1は「完全につながりあった」グループで、他人の結果が完全に閲覧可能。
    •        
    • 第2は「ローカルにつながりあった」グループで、隣接する人々の結果しか閲覧できない。
    •        
    • 第3は「スモールワールド」グループで、第2グループと同様に隣接する人々の結果しか見れないものの、その外にいるユーザーの何人かとメッセージのやり取りが可能。
    •     
       
 

こんな感じ。で、結果はどうだったかというと:

 
       
  • 第1の「完全につながりあった」グループは、数字とポイントの関係が単純な場合(つまり簡単な問題の場合)には最高の結果を残した。
  •    
  • しかし数字とポイントの関係が複雑になると、最も良い結果を残したのは第3の「スモールワールド」グループだった。
 

とのこと。その理由として、記事のタイトルにもなっている「良いアイデアが素晴らしいアイデアの誕生を阻害する(1つ解法が見つかると、より良い解法の追求が止まってしまう)」ということが指摘され、さらにこう解説されています:

 
   

"The small world network preserves diversity," Goldstone said. "One clique could be coming up with one answer, another clique could be coming up with another. As a result, the group as a whole is searching the problem space more effectively. For hard problems, connecting people by small world networks offers a good compromise between having members explore a variety of innovations, while still quickly disseminating promising innovations throughout the group.

   

「スモールワールド・ネットワークでは、ダイバーシティを保つことが可能なのだ」と Goldstone 氏は述べた。「小グループが他のグループと協調し、全体としてある問題への解法を効率的に探すこととなる。困難な問題の場合、スモールワールドがつながり合う形で人々が交流することは、あるイノベーションを広めると同時に別のイノベーションを追求することを可能にする。」

 

つまり問題が単純な場合は、誰かが見つけた答えをマネしてしまえばそれで済むと。しかし問題が複雑で、ソリューションがいくつも存在し得るような場合には、誰かが見つけた答えをマネしているとより良いソリューションの追求が止まってしまう――けれども情報交換ができなければ、それはそれで社会全体としての進歩のペースが落ちてしまう。その妥協点として望ましいのが「スモールワールドがつながる」という形式ではないか、という意見です。

 

類似の実験は、以前 Polar Bear Blog でも取り上げたことがあります(関連:ひとりで考える>みんなで考える)。この時も「困難な課題」に対する解決策を考える場合には、みんなで考えるよりもひとりで考えた方がアイデアの質が高くなる、という結果でした。人間はロボットのように論理的な判断ができる存在ではなく、「まあこの辺で考えるのを止めておくか」「あの人のアイデアだから大丈夫だろう」「みんなが賛同しているアイデアに反論するのは気が引ける」などといった非論理的な判断が入ってきますから、必ずしも「情報量やつながりの増加=出てくる答えの」とは限らないというわけですね。

 

また社内ブログや社内SNSと関連して考えてしまいますが、この実験結果は、単に社内の情報流通を改善しただけでは問題は解決しない、ということを示しているのかもしれません。例えば上記のゲームを、「良い営業スタイルを考え出す」という問題に置き換えた場合。もしかしたら、ブログやQAで成績優秀者のテクニックを開示することで、逆に「ああ、このテクニックをマネすればいいわけね」という風に思考停止状態を招いてしまうことも考えられるでしょう。情報を流通させる仕組を作ると同時に、それを利用する人々の意識や態度も変えていかなければ望ましい結果は得られないのだ、と思います。

アキヒト

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小林啓倫

小林啓倫

株式会社日立コンサルティングの経営コンサルタント。WEBサービスの企画・運営、新規事業の立案などに携わる。個人でPOLAR BEAR BLOGも執筆中。

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