公共サービスを狙え
ご存知の通り、日本郵政公社が民営化され、10月1日から持ち株会社「日本郵政株式会社」がスタートしました。ということで、つい先日郵便局に用事があり、様子を見てきたのですが……残念ながらこれといった変化はなし。相変わらず窓口の対応は遅いし、待たせても「お待たせしました」の一言もありません。僕の近所の郵便局だけかもしれませんが、やはり一朝一夕には変われないのかなぁと感じてしまいました。
実は先日、『社会が変わるマーケティング――民間企業の知恵を公共サービスに活かす』という本を買ってきて読んでいます。副題からも分かる通り、マーケティングの技術を使って公共サービスを改善しよう、という内容。マーケティングの第一人者、フィリップ・コトラー教授が共著者として名を連ねています。従ってマーケティングの本としても十分な内容で、「改めてマーケティングのおさらいをしたいんだけど、入門書じゃ退屈だしなぁ」という方にもオススメかもしれません。
「マーケティングで公共サービスを変える?無理だよ、自分だってたったいま『郵政民営化しても変化はなかった』って言ったじゃないか」―― はい、そうでしたね。確かに僕も書店でこの本を目にしたときは、同じ印象を抱きました。しかし同書には、豊富な事例が掲載されています:
- 英国における学校給食革命
- 米国のシートベルト着用キャンペーン
- ネパールのHIV/エイズ問題に対する取り組み
……
などなど大小さまざまな事例が登場し、私達がふだん活用しているマーケティングの知識が、公共サービスの分野でも十分に通用することを示してくれます。確かに民間企業の真似をしただけでは、上手く行かないケースもあるでしょう。しかし普通の企業だって様々な応用を行っているのですから、問題はマーケティングが通用するかどうかではなく、通用する方法を見出せるか否かなのではないでしょうか。またここで紹介されいるのは、平凡な民間企業以上に成功している事例とも言えます。その意味で、逆に私達の方もケーススタディから得るものが大きいと感じました。
最近「社会起業家」という言葉も一般的になってきています。私達がビジネスで活用している知識は、もっと公共サービスの分野で活かされていいのかもしれませんね。逆に公共サービスにこそ、良い意味で新しいビジネスのタネが落ちているのかもしれません。「そんなの行政がやる仕事だよ」という思い込みはいったん封印して、身の回りを見渡してみるというのはどうでしょうか。