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書評『いる社員、いらない社員』

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またまた ITmedia さんから書評用にいただいた本のご紹介を一つ。今回は『いる社員、いらない社員』という本で、(株)リンクアンドモチベーション代表の小笹芳央さんが書かれたもの。タイトルの通り、企業にとって「いる社員」「いらない社員」を対比した上で、「いる社員」になるためには何を心がければ良いかが語られた本。また第4章には、「実録『いる社員』」として、実在の方々4名のインタビューが掲載されています。

正直なことを言うと、僕は「仕事論」的な本をほとんど読みません。それはこの種の本の多くが「頑張ればできる」「要は気の持ちよう」といった精神論に終始してしまうため。また提示される価値基準が1つだけで、「こうであらねばならない」という風に「著者にとっての理想的な社員」が語られることも多く、違和感を感じることがあることも理由の1つです。その点『いる社員、いらない社員』では、「こうしてみたらどうだろう」といったライフハック的なテクニックや、「こんな人がいた」といった事例紹介が数多く挙げられていたので(特に第4章は全体がインタビューで費やされていますし)、自分にしては珍しく「うんうん、これは納得だな」という気持ちで読むことができました(高飛車ですみません……)。

ただ、1つだけ違和感を感じたのは「いる社員・いらない社員」という切り分け。確かにこうすると、「勝ち組・負け組」的な対比ができて面白いのですが、個人的には「100%いる社員」もしくは「24時間365日いる社員」というのは非常に稀な存在だと思います。あるプロジェクト、もしくはある会社のあるポジションでは非常に「いる社員」だったのが、別の環境では全くダメな「いらない社員」になってしまったり。また何かのタイミングで、昨日と同じ環境であっても「いらない社員」メンタリティーに突然陥ってしまったり。生物の種のように「いる社員族」「いらない社員族」がいるのではなく、同じ個人でも「いる・いらない」は常に変化しているのではないでしょうか。

もちろん本書は「完璧な社員になれ!」と提言しているわけではありません。しかし「いる社員・いらない社員」という言葉は「1か0か」というイメージを招きやすいように感じます。本書で紹介されている理想像はごく自然なものですし、テクニックも難しいものではありません。それだけに、それが実践できなかった場合に「やっぱりオレはいらない社員なのかな」と落ち込むのではなく、「なぜ今回はダメだったのか、このシチュエーションの何が問題なのか」を考えると良いのではないでしょうか。僕は楽天家なので、ダメなときは「いやいや、次はどーにかなるんじゃない?」と考えてしまうのですが、それはそれで問題ですね……。

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