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エンタープライズ2.0、の前に必要なもの

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ブログにSNS、Wiki などなど、WEB2.0を代表するツールを企業内に導入する動きが一般化しつつあります。これを総称して「エンタープライズ2.0」などという言葉も生まれていますが、ツールを導入する前に本当に見直さなければならないのは、過去のシステムではなく社内文化なのかもしれません。

ハーバード・ビジネス・レビューの2007年9月号に、気になる記事が掲載されていました。Brain Food のコーナーにあった「『沈黙は金なり』症候群」という記事がそれなのですが、ある実在の企業内にはびこっていた「会社に貢献するようなアイデアや発言はあえて慎むという傾向」について解説したものです。

「お客様の言い分をそのまま上司に伝えたら、かえってやぶへぶになってしまう」。社員たちがこんなことをこぼしているのを耳にしたら、あなたはどう思うだろうか。この発言は、ある大手IT関連企業から依頼されて、我々が同社の社内コミュニケーションについて調査した際に、偶然聞いてしまった会話の一部である。

(中略)

しかし、企業文化に関する調査では、回答者の半数が「忌憚なく発言したり、これまでのやり方に異議を唱えたりするのは得策ではない」と答えた。もっとも、どのような発言がためらわれるのかというと、問題を指摘する類のものではなく、製品、製造プロセス、業績などの改善につながる独創的なアイデアの提案だった。

「アイツが悪い!」などといった、明らかに社内に波紋を呼ぶ発言だけではなく、会社にとってプラスとなるような発言まで控えられていたわけですね。ちなみにこの会社、意見を上げるための仕組みがなかったわけではなく、社内オンブズマン制度や苦情申し立て制度などが整備されていたとのこと。なぜそういった仕組みが活かされなかったのか、原因となった感情がいくつか挙げられています:

  • 組織にプラスとなる提案でも、吉と出るか凶と出るかは分からない。
  • お偉方は「オレは問題を把握している」という自負心が強いため、改善を提案しても快く思わないだろう。
  • 平社員が提案したのでは、上司が恥をかいてしまうだろう。

などなど。つまりそれ自体は「良い提案」だったとしても、結果的に社内に波紋を呼ぶのではないか、誰かの反感を買うのではないかという恐れがあったわけです。調査対象となった企業がどの国の企業なのかは分かりませんが、恐らく日本の企業であれば、こういった「和をもって貴しとなす」という傾向はさらに強いのではないでしょうか。

そんな文化が存在していては、いくら情報発信ツールが進化しても、その価値を十分に引き出すことはできないでしょう。もちろん日本的な「和」の心が悪いというわけではありません -- 時と場合に応じて、その弊害を最小限に抑えなければならないということです。「エンタープライズ2.0」を追い求めることは、必然的に社内文化を作り変えることに繋がっていくのではないでしょうか。

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