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知識の呪い

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知識はあればあるほど良い、と言えるでしょうか?お金でさえ、過剰にあると思わぬ害をもたらします(宝くじで数億円を手にした人々が、その後破滅的な人生を歩んだなどという海外ニュースがたまにありますよね)。何にでも副作用があるとすれば、知識の副作用とは何か?という話が、最新号のハーバード・ビジネス・レビューに掲載されています:

■ 知識の呪い (ハーバード・ビジネス・レビュー 2007年4月号

知識を身につけてしまうと、それが「当たり前」のこととなってしまい、同じ知識を共有していない人々の気持ちが分からなくなる -- 結果として、その知識を他人に伝えることが難しくなるというのが「知識の呪い」。BRAIN FOOD 欄の記事なので、興味のある方はさっと読んでみて欲しいのですが、実は先日からご紹介している本"Made to Stick"の内容を抜粋したものです。ただ実験結果を見るまでもなく、「勉強のできる人は教えるのがヘタ」などのように、経験的に肯ける話かもしれませんね。

先日、あるWEBサービスを見ていて、自分もこの「知識の呪い」にとらわれていることを認識させられました:

myTimeHero - Are you a TimeHero?

Mashable 経由で知ったサイトなのですが、簡単に言ってしまえば「中高年向けSNS」。同じコンセプトのサービスは既に存在していますが、全てのページに文字の拡大・縮小ボタンが付いているなど、単に言葉だけで「中高年向け」を標榜しているSNSではありません。最も関心したのは、「こんなところまで?」と思うような細かい解説が用意されている点。例えばCAPTCHAには「この作業は未承諾のスパムメールを防ぐために必要です」という一文が添えられているなど、シンプルなデザインのWEBサイトを見慣れた身からすると「ちょっと過剰じゃない?」と感じるぐらいテキストで溢れています。

そう感じた時に、これはまさに「知識の呪い」だと気づきました。僕が同じサイトをスタートさせていたとしたら、多くの説明をはしょっていたことでしょう。知識がなければ、良いサービスは作れない -- しかし知識があっても、良いサービスを利用してもらえるとは限らない。しかも運営者たちは「なぜこんな良いサービスを誰も使おうとしないんだ?」と理解できずに終わってしまう、それが「知識の呪い」の怖さだと思います。

残念ながら、「知識の呪い」はいたるところで現れるものだと"Made to Stick"は警告しています。無意識のうちに、相手も同じ知識を持っているのだと思い込んでしまっていることがないかどうか、常に注意していなければいけませんね。そういえばうちの奥さんから「あなたの話は分かりにくい」とよく言われてしまうのは、この呪いが元凶なのかも……。

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