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プロフィールと認知欲求

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ITmedia を読んでいると、若い世代(僕の頭の中では高校生~20代前半ぐらい)がハマっているウェブサイトについての記事を目にすることがあります(例えばこの記事この記事)。その多くが携帯電話向けサイトで、僕が見たことも聞いたことも触れたこともないサービスばかりなのですが、先日読売新聞でもこんなサイトが紹介されていました:

ケータイで自己紹介、女子高生にプロフ流行 (YOMIURI ONLINE)

「プロフ」と総称される、ネット上にプロフィールが公開できるサイトについて。「前略プロフィール」や「マイプロフィール」などのサービスが有名だそうで、日本の女子高生の半数近くがプロフを所有しているという調査結果があるのだとか。恥ずかしながら、こんなものが流行しているとは全然知りませんでした。

「プロフ」の目的の1つは、複数のブログ/SNSにユーザー登録している場合に、プロフィールを一元管理することで登録・管理の手間を省くということだそうです。しかし「プロフ」だけしか持っていないユーザーも存在し、またプロフィールとして一般的な情報(ニックネームや趣味など)より踏み込んだ情報(将来の夢や前世!?など)を熱心に書き込む人が多いとのこと。なぜブログでもSNSでもないのに、手間をかけてプロフィール登録したがるのでしょうか。

以前、Yahoo! Research Berkeley の研究員をされている Danah Boyd さんが書かれた記事に、なぜ MySpace があれほどヒットしたのか?を考察したものがありました("Friendster lost steam. Is MySpace just a fad?")。その中で、こんな指摘がされています:

Youth and alienated populations are inclined to spend more time going through identity development processes because they are trying to "figure out who they are." Blogs and profiles are particularly supportive of this. Of course, blogs require having something to say while profiles let you write yourself into being via collage.

若者や疎外されている人々は「自分が何者か」を明らかにしたいと願い、アイデンティティ構築に長い時間を費やす。ブログやプロフィールはそれに役立つ存在だ。ブログを書くには何か言いたいことがなければならないが、プロフィールはコラージュを通じて(※様々な項目を満たすことの比喩か?)自分について書くことができる。

(中略)

MySpace let these groups run wild and these are the two populations who dominate MySpace - youth (14-24) and 20/30-somethings who participate actively in cultural development (from performance artists to clubgoers to sex divas to wannabee celebrities). These sites are ideal for these populations, even if they make no sense to parents and professionals.

MySpace は彼らのやりたいようにやらせ、若者(14歳~24歳)と文化的活動に携わる20代~30代の人々(パフォーマンスアーティストやクラブマニア、風俗関係者、セレブ候補生など)が MySpace を支配するようになった。親や学者にとってはナンセンスな場所でも、こうしたサイトは彼らにとって理想的な世界なのである。

つまり若者には「自分を示したい」という欲求(マズローの自己実現理論で言うところの「認知欲求」か?)があり、それを MySpace がうまく満たしてやったのが成功の一因ではないかという考察ですね。この関係は、日本の若者と「プロフ」の間にも当てはまるのではないでしょうか。つまり「自分を示したい」という要求に対して、「プロフィール」という形でブログやSNSなどよりも簡単にそれを実現できるようにした、さらに日本に特有の「携帯電話」という要素をうまく取り込んだ(「プロフ」の多くは携帯電話からの更新・閲覧が簡単にできるようになっている)という点が、ヒットの裏側にあるのかなと感じます。

ところで、こうした認知欲求は若者だけにあるものではないはずです。程度と優先度の差はあれど、誰にでも存在しているというのが「自己実現理論」でしょう。とすれば、大人向けにも「プロフ」のようなサービスがあっていいように思うのですが。それはプロフィール登録という姿ではなかったとしても、近いうちに現れてくるように思います。

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