ビジュアル・デザインとソーシャル・デザイン
日本で SNS と言えば Mixi が代表格ですが、アメリカでNo.1 SNS サイトと言えば、ご存知の通り MySpace 。両者を比較すると、ある大きな違いに気づきます。それは MySpace のデザインが非常に雑然としていること。しかもマイページを大幅にカスタマイズできるので、ユーザーによっては情報がごちゃ混ぜになっていることもあります(しかもあり得ないカラーリングで目がチカチカすることも……)。Mixi にも使いづらい部分はありますが、MySpace はユーザビリティの教科書で「悪い例」として紹介されそうな部分ばかり。とても使い手のことを入念に考えているとは言えません。
そんな「かっこ悪い」サイトなのに、なぜ大ヒットしたのか?を「ソーシャル・デザイン」というキーワードから考えたエントリがあり、なるほどと思いました:
■ Ugliness, Social Design, and the MySpace Lesson (Bokardo)
MySpace は見た目(visual)のデザインは悪いかもしれないが、人々に参加してもらう(social)ためのデザインは優れているのだ、という議論。この「ソーシャル・デザイン」という概念については、以下のように解説されています:
There’s a new term: social web design. I’m using it nowadays to refer to the social aspects of design: community, persuasion, motivation, social interaction, influence, authority, etc. These things aren’t always apparent in the interface, but are just as real as a submit button. If your friend uses MySpace and uses the email widget to ask you to join, that’s a win for the design…social design.
「ソーシャル・ウェブデザイン」という新しい言葉がある。私は最近、この言葉を「デザインの社会的側面(コミュニティ、説得、モチベーション、交流、影響力、権威など)」を示すときに使っている。これらの要素をインターフェース上で確認することができない場合もあるが、「送信ボタン」と同じくらい実態を持つものである。もしあなたの友人が MySpace や email ウィジェットを使っていて、それにあなたも参加するように誘ってきたとしたら、それは「ソーシャルデザイン」の勝利なのだ。
もちろん MySpace の成功については、「ミュージシャンを巻き込んだ」「カスタマイズできること自体が魅力」「若年層にターゲットを絞った」など他にも様々な要因が挙げられると思います。しかし一見最悪のように見えるデザインが「交流を促す」という点にどのような貢献をしているのか、注目してみる必要があるのではないでしょうか。
個人的には、ビジュアル・デザインとソーシャル・デザインの対比は「ふつうの本屋」vs.「ヴィレッジ・バンガード」、「ふつうのGMS」vs.「ドンキホーテ」という例に例えられるのではないかと思います。品揃えや立地条件などという要素を無視して考えれば、通常のデザイン理論では後者(様々なモノをごちゃまぜにして詰め込む)の成功は説明できません。しかしなぜか人々は惹きつけられ、そこにあるモノとの交流を楽しんでしまう……それはまさしく「ソーシャル・デザイン」の勝利でしょう。
WEB2.0 というキーワードを出すまでもなく、企業とユーザー、ユーザーとユーザーの間で多くのトランザクションが発生するサイトが増えてきました。これからはユーザーに対して、サイトとの交流を容易するためのデザイン(ビジュアル・デザイン)を提供する以上に、他者との交流を促進するためのデザイン(ソーシャル・デザイン)を提供することが重要になるのかもしれません。そして Bokardo のもう1つのエントリでも指摘されている通り、それはデザイナー任せにしていても実現できるものではなく、企画者のタスクとして考える必要があると思います。