歯磨きトレーニング
以前、こんな思考トレーニングを教わったことがあります:
- あなたのミッションは「歯磨き粉を売って利益を上げること」。
- 利益が上がるのであれば、手段は問わない(ただし「自社製品を買うように銃で脅す」など明らかに非現実的なものはNG)。
- これまでにないような案を10個出すこと(お店に出かけたりネットで検索するなど、できるだけリサーチしてみる)。
- 出した案を皆で共有すること。
- 1-4 を定期的に繰り返すこと。
要は手頃なネタでアタマの体操をしよう、ということ。歯磨き粉は差別化の難しいコモディティ品の象徴なので、対象は小麦粉でも緑茶飲料でも、何でもかまいません。パッと目に入ったモノで、自分ならどうするだろう?を考えてみようというトレーニングです。
このトレーニングの狙いは、単にアタマを柔軟にするということだけではありません。もっと重要な効果として、(1)「思い込みフィルタ」を外す (2)知識を自分のものとする、という2つがあります。
僕らは無意識のうちに、「○○は○○だ」という思い込みを身につけてしまっています。「歯磨き粉の効能なんてどれも同じだ」「価格もほとんど一緒だろう」「デザインだって似ているし」などなど、知らず知らずのうちに「歯磨き粉はどれも一緒」と考えていないでしょうか?(日本の歯磨き粉は多種多様なので、ちょっと例にはふさわしくないかもしれませんが。)そう思い込んでいると、実は目の前に変わった歯磨き粉が置かれていたとしても、それを認識することができません。これが「思い込みフィルタ」です。
「歯磨き粉トレーニング」ではユニークなアイデアが求められますから、おのずと「現状はどうなっているんだろう?」という意識になります。そうなれば「思い込みフィルタ」は外れ、まっさらなアタマで情報を取り込むようになるわけです。だまされたと思って、「○○なんてどれも一緒」と思っている商品/サービスを詳しく見てみて下さい。意外なほどバリエーション豊かなことに驚かされるはずです。
さらにこのトレーニングでは、自分が持っている知識を総動員することが必要になります。これが効果(2)の「知識を自分のものとする」というポイント。ビジネス書や新聞・雑誌などを読んでいると、「へぇ~、これって優れたアイデアだな。いつか使ってみよう」と思うことがありますよね。しかし得た知識がすぐに応用できるケースなどほとんどありませんから(「僕は自分のビジネスに直結する実用書しか読まないよ」という人は別ですが)、いつか使おう・・・と思ったまま埋もれてしまうわけです。「歯磨き粉トレーニング」を定期的に行うことによって、「あ、そういえばこないだ○○っていうアイデアを読んだな。それがここで応用できないかな?」と脳内で再利用することができます。そうすることにより、上っ面な情報を自分の知識として習得できる・・・という具合です。
ちなみに僕がパッとアタマに浮かんだのはこんなアイデア:
- 「鮮度」という要素を持ち込み、「歯磨き粉も新鮮が一番!出来たての歯磨き粉で、いつもフレッシュ」とPRして消費者を教育する。一方で、店頭に並んでいるのは製造日から3日以内のものだけになっている体制を整える。
- 「歯磨き粉サイト」をオープン。自社だけでなく他社の商品も掲載し、自分にピッタリの歯磨き粉が探せるようにする(同時にネット上からも購入可能にしておく)。一方で、「歯を治療中の人専用歯磨き粉」などニッチな製品を大量に用意し、歯磨き粉サイトと合わせてロングテール効果が発生することを狙う。
- 容器を紙などで製造し、使用後に燃えるゴミとして廃棄可能にする。もしくは詰め替え可能にして、「詰め替え用ボトル」などのラインナップを用意し、エコを気にする層にアピールする。
あくまでも適当に考えただけですので、実効性についてはご容赦を。いくつか最近読んだ本から得たアイデアが入っているので、「小林はあの本を読んだな」と分かっても黙っておいて下さい(笑)
年末・年始で長期休暇を取られる方も多いと思いますが、だらーっと過ごすのに飽きたら、身近なモノでこんなトレーニングはいかがですか?