チェックリストは免罪符じゃない
上司: ちょっと君、昨日作ってくれた資料だけど、間違いがあったよ。
部下: 本当ですか?チェックリストに載っている項目、すべて確認したんですけど・・・。
上司: チェック項目じゃないけど、「1,000」が「10,00」と入力されていたんだよ。
部下: えー?それなら「桁区切りに注意」ってチェック項目を入れておいてくれれば良かったじゃないですか!
上司: ・・・。
こんな会話を聞いたとしたら、あなたは上司と部下、どちらが悪いと思いますか?「桁区切りに注意」というチェックをリストに明記しなかった上司でしょうか、それとも基本的な常識が欠けている部下でしょうか?
上記の例はさすがに極端すぎると思いますが、同じようなケースを経験されている方は多いのではないでしょうか。ここで問題なのは、チェックリストがあたかも免罪符のように扱われていることです。仮に上司が「悪かった。じゃあチェックリストに追加しておくから、次回から気をつけておいてくれ」と対応してしまったら、部下はますます「チェックリストを見ていれば怒られない」と考えてしまうことでしょう。
コンピュータのような脳を持っている人間であれば、「チェックリスト=免罪符」でも良いでしょう。気をつけて欲しいことを全て網羅したリスト(1,000や2,000ぐらいの項目数になるかもしれません)を作り、それを厳守させればよいからです。しかしそんなリストを隅から隅まで注意できる人などいませんから、通常はリストの長さとチェックが漏れる確率は正比例します。だからこそ、チェックリストはできるだけ短くなければなりません。従ってそれは「掲載されていない項目はチェックしなくて良い」という免罪符ではなく、「チェック項目は絶対に漏れてはならないため、最優先でチェックするが、それ以外の項目も時間が許す限り確認して、成果物の品質を高める」という優先順位のリストとして扱われなければならないのです。
ただし上記の例でも、仮に桁区切りが非常に重要な項目で、かつ作業者が超初心者(桁区切りの場所も分からないほど!)だったとしたら、そこでミスが起きないようなチェックリストを作るべきだったでしょう。またあらゆる資料の常として、文字となった知識が固定化し、古くなってもなかなか更新されないという危険性もあります。チェック体制は一度作って終わりではなく、常に見直しとフィードバックを繰り返して、現状に即したものになっていなければなりません。
そう考えてみると、チェックリストや「○○するための○ヶ条」といったものは非常に便利なものである反面、危険性を潜めたものなのかもしれませんね。ミスを放免・助長するような免罪符となるか、決定的なミスを防ぐための盾となるか。諸刃の刃なのかもしれません。