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決して最先端ではない、けれど日常生活で人びとの役に立っているIT技術を探していきます。

昨日のニュースですが、アビームコンサルティングが面白い調査結果を発表していました。なんでも過去におけるIT投資の成果を「期待以上」だとした国内企業はゼロで、「期待通り」との回答も30%にとどまっているそうです:

IT投資の成果、「期待通り」はわずか3割――アビーム調査 (ITmedia エンタープライズ)

過去3年間におけるIT投資の成果について質問したところ、全体として「期待以上」という回答は0%。「期待通り」は、2003年10月~12月に実施した前回調査同様、30%にとどまった。逆に「やや不十分」は56%、「不十分」は10%となった。

とのこと。「なるほどこれは問題だ、やはりIT投資にはコンサルタントを雇わないと」 -- と思ってくださると、我々コンサルタントにとっては非常にありがたい話です。しかしちょっと待った。この調査、本当に「IT投資が見合った効果を出すの は難しい」ということを示しているのでしょうか?コンサルティング業界からは恨まれてしまうかもしれませんが、ちょっとイジワルな見方を。

(1) IT投資は効果が出しにくいのか

まず第1に、そもそも「期待」はIT投資の効果を計るのに適切な指標でしょうか?もちろん顧客満足は大切なことですが、「期待通りの結果が出たかどうか」というのは極めて主観的な指標です。もしかしたら、IT投資は効果を出しにくいのではなく、期待に答えにくい(結果が出ても評価に結びつきにくい)だけなのだという可能性はないでしょうか。

アビームの調査をよく見ると、次のような結果が出ています:

ただし、投資の目的別に見ると若干傾向が異なるという。「情報セキュリティの強化、コンプライアンスの確保」については47%が「期待通り」と回答。「業 務コストの削減、業務プロセスの自動化、効率化」についても39%が「期待通り」だとした。一方、「売上の増加、製品・サービスの向上、ビジネスモデルの 実現」となると、「期待通り」と「期待以上」を合わせても2割以下にとどまり、逆に「やや不十分」「不十分」が66%に上る結果となった。

この中で「情報セキュリティ強化」や「コンプライアンス確保」というものは、比較的効果を数値化あるいは可視化しやすい分野だと思います。また情報システムが「何をするか」が明確になっていますから、余計な期待を抱きにくいという側面もあるでしょう。逆に「製品・サービスの向上」や「ビジネスモデルの実現」という分野では、成果を可視化しにくい上に、IT技術だけでは効果を出しにくい(IT以外の要素が成功を左右する)という傾向があります。また「ビジネスモデルの実現」などという目標を掲げれば、それだけ関係者の期待も高くなるでしょう。つまり「期待に沿えたか否か」というのは投資効果以外の要素によって左右されるもので、IT投資の効果を適切に示すものとは言えません。

またもう1つ問題なのは、この調査が「IT投資」しか取り上げていない点です。企業内の他の活動 -- マーケティングや販売促進、人事や営業活動など -- を調査の対象に含めたら、それらも「期待通りの成果を上げていない」という回答が多いかもしれません。もしかしたら、CIOには非常に気難しい人が就任する傾向が強く、どんな業務にも満足することが少ない可能性だってあります。だとすれば、IT投資が「期待通りの結果を出した」という人が30%「も」存在するのは、非常に優秀な成績であるという可能性も捨て切れません。

(2) IT投資の成功にはトップと現場の関与が必要か

さらにアビームでは、IT投資の効果を「期待通り」と回答した企業を成功企業、「やや不十分」「不十分」と回答した企業を不成功企業として、IT投資の企画、推進に対する経営トップの関与度合いなども比較したそうです。その結果、「経営トップの関与」「利用部門の関与」「IT部門のケイパビリティ(提供能力)」で成功企業が不成功企業を上回っていたとのことで、

アビームは一連の調査結果を踏まえ、IT投資効果を上げるためには、「課題解決をIT部門任せにしない」ことが不可欠と指摘。経営トップと利用部門、IT部門がともにIT活用を推進する「協働型IT経営」の確立が欠かせないと述べている。

そうです。しかしこの結論も、そう簡単に導けるものなのでしょうか。

もし経営トップが深く関与したITプロジェクトがあったとして、そのプロジェクトが「期待通りの成果を残したか」と聞かれたら、たいていの人は「YES」と答えるでしょう -- トップが参画したのにプロジェクトが失敗した、などとは口が裂けても言えません。また利用部門が関与したITプロジェクトは、その分ユーザーの声を反映し、満足度が高いシステムが実現されるのかもしれません。しかし「ユーザーが満足しているシステム=成功したシステム」と言えるでしょうか?ユーザーの声を聞きすぎて、カスタマイズに莫大な費用をつぎ込んだプロジェクトや、新しいビジネスプロセスの導入に失敗したプロジェクトである可能性はないのでしょうか?

「IT投資の成功には、トップと現場の関与が欠かせない」という指摘は、これまたコンサルタントにとっては非常に都合の良い結論です。どんなプロジェクトでも、新しいシステムやプロセスの導入によって必ず反発が巻き起こるものですから、トップダウンによるプロジェクト推進や現場のオーナー意識醸成が欠かせません。この結果を見て「そうか、計画の早い段階からトップや現場を巻き込もう」と思っていただけたら幸いです。しかしそれらが「参画者の満足度が高いシステム」ではなく「投資効果の高いシステム」を作ることに効果があるのかどうかという点については、今回の調査結果からだけでは結論付けられないと思います。

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というわけで、コンサルタントにとっては本当に嬉しい(?)調査結果をイジワルに見るのは心苦しいのですが。具体的な数字が付いた意見は、「なんとなく正しそう」という空気を醸し出してしまうものですから、ちょっと批判的な目で見るくらいがちょうどいいかもしれませんよ。

アキヒト

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小林啓倫

小林啓倫

株式会社日立コンサルティングの経営コンサルタント。WEBサービスの企画・運営、新規事業の立案などに携わる。個人でPOLAR BEAR BLOGも執筆中。

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