「試着室」を工夫する
最近、小売店の店舗経営に関する本を読んでいたのですが、試着室について以下のような一節がありました:
試着室を使うお客は、まさに商品を買おうとしている人々である。しかしたいていの店では、試着室は狭く、鏡が置かれているだけである。たとえ買う気満々んのお客であっても、狭くて薄暗い試着室に閉じ込めてしまっては、気分が変わってしまうに違いない。
そして次のように提言しています:
試着室は広く、明るくすべきだ。窓がある部屋で、自然光の下での色合いが確認できればなお良い。座った時の感じを確認するために、イスも置いておくべきだろう。またコートやアクセサリーなど付属品を置いておけば、お客にとってはコーディネーションが確認できるし、店にとっては追加販売のチャンスとなる。
そう言われてみれば、確かに試着室はもう少し改善の余地がありそうです。僕はそんなに服を買う方とは言えませんが(さらに言うと、男性は試着室を使う傾向が低いそうです)、落ち着いた気持ちになれる試着室などというものはお目にかかったことがありません。実際問題としては、様々なシチュエーションの中での着こなしを確認できるような、広い試着室を用意するのはなかなか難しいでしょう。しかし着替えがしやすいように、せめてスペースを広くしてイスを置くぐらいの工夫をしても良いのではないでしょうか。
ただ最近では、少しずつ店側の意識も変わりつつあるようです。例えばあるお店の子供洋服売場では、ベビーカーと一緒に入れる「親子試着室」を用意しています。入口にはソファーと絵本を置くなど、従来の「試着室」よりもずっと明るいイメージです:
話は変わって、最近ある企業向けシステムの評価をするために、デモサイトを使っていたことがありました。製品版とまったく同じ環境で、ユーザーは自由に触ることができます。しかし問題だったのは、そのシステムが実際に企業で導入された後のイメージがまったくつかめないこと。ダミーのデータは入っていましたが、通常の企業活動で想定されるものとは言えず、ボリュームも不足していました。またそのシステムは付属アプリケーションがあり、こちらもデモが確認できるのですが、両者の連携はなし。先ほどの小売店の例で言えば、「服と一緒にアクセサリーも買ってもらうチャンス」をみすみす逃がしているような状態でした。
システムやアプリケーションにとって、「デモ版」「サンプル版」はいわば試着室のようなものです。しかし小売店の試着室同様、十分な配慮が与えられていないのではないでしょうか。デモ/サンプルは興味を示してくれた潜在顧客に売り込む最大のチャンスなのですから、もっとそのシステム/アプリケーションを評価しやすいような環境を用意すべきでしょう。例えば、少なくとも以下の点に配慮する必要があると思います:
- ダミーデータの質とボリュームは十分か
- 他システム/アプリケーションとの連携は確認できるようになっているか
- 組織構成(アクセス権限)を反映したダミーアカウントが用意されているか
- ワークフローが確認できる環境/データが用意されているか
- 障害発生時のシミュレーションができるか
上記以外にも、さまざまな工夫があり得るでしょう。架空の企業が実際にシステム/アプリケーションを使っているダミー環境に、社員の立場で参加することができる、そんな究極のダミー環境を運営する企業(あるいは関連製品で結ばれた企業群)が現われても面白いと思います。