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Googleも避けられなかった落とし穴

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僕の住んでいるマンションは、「加齢対応型住宅」という肩書きが付いています。その名の通り、廊下や浴室などあちこちに手すりがついていて、立ち上がったり歩いたりする時につかめるようになっています。また出入り口や通路によけいなでっぱりがなく、ベビーカーでもぶつからずに出入りできるようになっています(本来は車いすを念頭に置いた設計でしょうが)。詳しいことは知らないのですか、こういった設計をすることで、地方自治体から建築時に助成金がもらえるようです。

しかし1ヵ所だけ「加齢対応」とは言えない場所があります。それはエントランスのドア。オートロックになっていて、開くためにはカギを解除しなければなりません。そのカギの位置が、ちょうど大人のひざ下付近にあるのです。それがどうした?と思われるかもしれません。僕も子供が生まれて、子供をダッコして移動するようになるまでは何とも思いませんでした。ところが子供を片手で抱き、このカギを解除するのは一苦労。このところトレーニングとは無縁の生活を送っていることもあり、子供とお出かけするときには泣かされています(最近は一人で歩いてくれるようになりましたが)。

こうした「健常者にとっては何ともないけれど、そうでない人々には使いづらい」という問題、けっこう根深いもののようです。最近、別のブログで「なんちゃってバリアフリー」という問題について書いたのですが、これは「バリアフリーと銘打っておきながら、実はバリアフリーではない」「バリアフリーなんだけど、まずい運用のせいでバリアフリーでなくなってしまっている」という設備/施設のことを指す言葉なんだとか。(某ホテルチェーンのように)確信犯的に行われる場合もありますが、障害者の視点に立って初めて気付いたという「うっかり型」の方が数も多く、自覚されていないだけに対応が遅れてしまうそうです。

実はこの「無意識のうちにバリアを作ってしまう」という落とし穴、Googleも避けられなかった問題でした。先日のITmediaに、こんな記事が掲載されています:

■ アクセシビリティに扉を閉ざしたままのGoogle Part 1 / Part 2 (ITmedia)

WEBサービスにユーザー登録をする際、スパムなどの目的でIDを不正に大量取得することを防ぐための仕組み「CAPTCHA」(Completely Automated Public Turing test to tell Computers and Humans Apart、例のぐにゃぐにゃとねじれた文字が現れるアレです)が、目の不自由な人々の障害になっていることについて解説した記事です。多くの障害者が視覚認証以外のアクセス方法を求めているにも関わらず、Googleの対応が遅れていることについて批判が高まっている、とのこと。Googleだけでなく、Yahoo!についても「取り組みが十分でない」と批判されています。

不正なIDの大量取得を防ぐためには、何らかの手段が必要なことは事実です。ではCAPTCHAに変わる認証手段がないのかというと、そうではないようです。記事では音声による認証や、電話による本人確認などの事例が紹介されていますし、容易に代替手段を開発することも可能だと示されています。しかしGoogleは「自社のインフラおよび提供製品は複雑さを極めており、CAPTCHA代替策を提供することがいかに困難であるかを説明」しているとのこと。つまり「もうCAPTCHAが複雑に組み込まれてしまっており、いまさら換えられない」ということのようです。

Googleの説明が事実かどうかは別にして、CAPTCHAをスパム対策として採用する前に「これは視覚障害者に使いづらいのではないか」と考えられなかったのでしょうか?Googleが批判されるべきか否かを論じるのがこの記事の目的ではないのですが、「自分が同じ立場だったら気付いたのか」と言われると、正直言って自信ありません。CAPTCHA問題はGoogleという優秀な技術者がそろった企業であっても、「他人の視点に立ってサービスを設計すること」の難しさ、そしてそれを怠ったときの影響の大きさを示しているのではないでしょうか。

Google、Yahoo!などの大企業が批判されているいまでも、新しく運用を開始するサービスでCAPTCHAを採用するものが後を絶ちません。これも「他人の視点に立つ」姿勢がいかに無視されやすいかを示しているのではないでしょうか。同じくWEBサービスの企画に携わる者として、常に注意していなければいけない落とし穴だと考えています。

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