SLAでの信頼と実績での信頼
企業でクラウドが広がるためには"サービスの信頼度"が一つの大きな要素であることは、前回も触れたように言うまでもないことかと思います。サービスの信頼度と言えば、多くの人はSLA(Service Level Agreement)を思い出すでしょう。またSLAの要素でもある、99.9%といったようなサービスの稼働率が典型的な信頼の指標となったりします。
ユーザーの立場から言えば企業のITシステムの一部、ないしは土台となるサービスには厳しいSLAを契約で結ぶことでリスクを減らすのが、今までのオンプレミス(自社運用)からクラウドに移るための必要条件である、と考えるのは当然かもしれません。
オルタナブロガー林さんも紹介しているように、総務省と経済産業省が絡んで、それぞれでSaaSのSLAに関わるガイドラインを出しています。これらはベンダーには一定のSLAの確立を促し、ユーザーにはサービスを評価する視点を与えるという、マーケットを信頼のもとで健全に成長させるための施策だと思います。
その総務省が絡んだ、"ASP・SaaS安全・信頼性に係る情報開示認定制度"で認定されたサービスの申請時の公開情報を眺めてみました。現在30社以上のサービスが認定されていますが、サービス稼働率に関してはほとんどのベンダーが実績値として99.5%以上を申告し、Salesforceなどはあの規模で99.95%以上だそうです。
またSLAを契約時に入れているかという項目は、多くがYesと答えていますが、比較的大きなベンダーはSLAは契約には入れていないようです。またYesと答えているところも残念ながら公開されている情報はほとんどなく、ホームページで公開というところも、サービス稼働率の保証をあげているところはありませんでした。
SLAでサービス稼働率99.9%を宣言しているGoogleの有料版Gmailですが、夏のころの障害でSLAを守りきれず、ユーザー契約期間の延長を無料でしていました。
以前、数万人規模のヘビーユースの電子メールシステムを展開した経験がありますが、99.6%のサービス稼働率で、ユーザーの不満はトラブル時に多少はあるものの、まずまずのレベルだと考えられていました。
SLAの普及度はさておき、サービス稼働率で見るかぎりは、SaaSが広がり始めた現状を説明するには、システムの種類にもよりますが、実績ベースでまずまずの信頼度のレベルにきたのではないかと思っています。