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【速報】 Twitterエコシステムによる新しい広告ビジネスモデルが登場

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昨日から今日にかけて,注目すべきTwitter関連サービスが連続してはじまった。

Twitterエコシステムを活用した新しい広告ビジネスモデル,140 ProofSeesmic Look だ。

■ 140 Proof http://140proof.com/
140 Proof Distills Ad Network For Twitter (TechCrunch, 2010/1/20)  和訳記事は こちら

■ Seesmic Look ( http://seesmic.com/seesmic_desktop/look/)
Seesmic Look Is A Tablet-Friendly Twitter Client For The Oprah Crowd (TechCrunch, 2010/1/21)
Seesmic Look Tries to Take Twitter to the Masses (Mashable, 2010/1/21)
Seesmic makes Twitter pretty, with Look (CNET, 2010/1/21)
Seesmic Look: Bringing Twitter to the Mainstream (ReadWriteWeb, 2010/1/21)

 
これら二つのサービスは,サービス自体もさることながら,Twitterを活用した斬新なビジネスモデルが注目されている。それはTwitterエコシステムによる新しいマネタイズの可能性を示唆するものだからだ。では順をおってみてゆこう。


 ■ 140 Proof は,Twitter版Adwordsだ

140 proof は,Twitterのタイムラインに,広告テキスト(140文字)を挿入する広告配信サービスだ。例えば次のタイムラインのうち,背景が薄いグリーンに なっているものが広告テキストだ。
140p1_3
140 proofはTwitterクライアント提供企業と提携(TechCrunchによると既に40社以上と提携しているとのこと)し,Twitterとは別にこの広告をタイムライン上にTweetとして配信している。ちなみに広告配信や測定は140 Proofが提供するAPI経由で行なわれる仕組みとなっている。広告はクリック単価で,ReTweetやReplyなどはオマケとなる。

また広告配信先は,ユーザーの興味分野(下記ステップ3を参照)とキーワードでターゲット設定が可能だ。検索リスティング広告と比較して,ユーザーの興味分野を設定できるところが新しい。実際に広告設定のステップを見るとわかりやすい。

140p2
【ステップ1 - 広告テキストとURLを入力】

140p3
【ステップ2 - キャンペーン名とコンタクト先メール】

140p4
【ステップ3 - ユーザー・ターゲティング設定】

あっけないことに,わずかこの3ステップだけで,提携Twitterクライアントに広告Tweetが流れ始める。
なお,実際には最後に支払い情報を入力する必要があるが,現時点では限定無料で,設定画面はないようだ。

TechCrunchによると,このユーザーの興味分野は,Twitterユーザーを140 Proof独自アルゴリズム(Tweetやフォロー先を参考値として計算)でペルソナ分類しているとのこと。また広告キャンペーンの効果はクリック数,リ ツイート数,@返信数などで測定する機能も付加されるようだ。この点はまだ創業間もないベンチャー企業のため,今後の成長を見守る必要がありそうだ。

 
■ Seesmic Look はマス向け。Twitter上でブランド広告を可能にする


人気TwitterクライアントSeesmicが,全く新しいコンセプトのデスクトップ・クライアントとして昨日投入しはじめたのが,この Seesmic Look だ。まず概要を見てみよう。

Sl1

この画面を見ておわかり通り,従来のTwitterクライアントとは全くイメージが異なっている。

このクライアントは投稿よりも閲覧を主体とするライトユーザーをターゲットにしており,Twitterをテレビライクに見せようとしている工夫が随所に感じられる。したがってユーザーをフォローする必要もないし,そもそもログインしなくてもTwitterを楽しめるのが画期的なところだ。しかもユーザーインターフェースはタブレットやスマートフォンでのタッチパネルを想定しているように見える。

画面左側のメニューは,テレビのようにチャンネル構成になっている。
メインメニューととサブメニューは次の通りだ。

  • trends  - Now / Day / Week
  • inbox  -  public replies (@返信) / direct messages (受信DM) / sent items (送信DM)
  • social - friends (フォロワー) / 自分の登録しているリスト
  • favirites - tweets (自分が登録しているfavorites tweets)
  • interests - News / Sports / Entertainment / Celebrities / Music / Politics / Humor ・・
  • channels - RedBull / Huffington Post / Kodak / LIFE / SOTS / TIME
  • searches

このうち,trendsはTwitter上の流行ワード,inboxsocialは一般のクライアント機能,favoritesは自分の登録したお気に入り,searchesはTwitter検索と,他のクライアントと同様の内容だ。

そしてここで注目すべきは,青字部分の interestschannels だ。

このメニューではSeesmic Lookが独自に提携しているアカウントの情報が表示されるようになっている。interests - Celebrites と選ぶと20名の有名人がサブメニューに表示される。

例えば,Kim Kardashianを選択すると,次のような画面が出てきて,彼女のTweetが表示される。Tweetpicと連係して画像も表示されているのがわかる。

Sl4

もう一つ,channelsの方はもっと直接的で,広告主の情報が表示される専属チャンネルだ。
現在は,RedBull,Huffington Post,Kodak,LIFE,SOTS,TIMEの6社が契約しているようだ。

例えばTIMEを選ぶと,さらに8つのサブチャンネル,Nation, World, Politics, Business, Health&Sience. Enterainment, Specials, Writersが表示され,それぞれ異なったアカウントのTweetが割り当てられている。

下の画面は,channels - TIME - Business と選んだもので,@TIMEBusinessのTweetが表示されている。

Sl3

これで画像や音楽,動画と連係できれば,Twitterのキャズム越えに大きく貢献する可能性もでてきそうだ。

また将来的には,interests情報やtrends情報のクリック率などをユーザーごとのペルソナを分類し,余裕のある背景画面の一部にターゲティングされた広告を表示することも可能だろう。

 
■ 140 ProofとSeesmic Lookに共通する新しい広告ビジネスモデルの可能性

140 ProofSeesmic Lookは,それぞれ広告配信サービス(サーバーサイド)とTwitterクライアント(クライアントサイド)であり同一土俵で比較すべきものではないが,Twitterエコシステムの中で,独自コンテンツを挿入ないし編集し,そこに広告主を集うという点で共通しており,注目したいところだ。

140 Proofの方は,さらにTwitterクライアントから入手できるユーザー情報(Tweet,フォロワー,デバイス,位置情報等)からペルソナ分類し,Tweetキーワードと組み合わせることで,かなり精緻で高付加価値な広告配信ができるようになる可能性がある。

Seesmic Lookは,Twitter上で一般ユーザーに対するブランド広告の可能性を示唆するものだ。また現在は実装していないが,Twitterクライアントのため140 Proofのようなターゲティングアプローチも可能だ。しかもSeesmicは,すでに人気クライアントSeesmic(Twitter Clientsでは現在6位)を有しているため,そちらで収集した情報をLookに活用することも可能だろう。

Twitter本体も近い将来広告を入れる可能性があり,TechCrunchによるとすでに広告主と協議中のようだが,2010年はついにTwitterエコシステム全体に,ターゲティング広告が本格的に入ってくる可能性が高いと言えるだろう。

その際に,必ずしもTwitter本体だけでなく,Twitterクライアントなどのツール群や,そこに広告配信する中間サービスなどにもビジネスチャンスが出てくるだろう。特にTweetの位置情報と連動したエリア広告など,非常に有望な分野なのではないだろうか。


【追記】
140 Proofに対して,「日本の広告を出せる?」と質問を出してみたら,次のような回答がかえってきましたので,ご参考まで追記します。ポイントは,広告を日本語で書くことはできるけど,多くの日本語がわからない人たちのところに届いてしまう。現時点で日本人にターゲットするベストな方法は 「キーワード(上記「ステップ3 - ユーザー・ターゲティング設定」内の一番下,Tartget Geographic Locationsのキーワード設定)に,JapanとかTokyoとかを設定する」ことのようです。

Thank you for contacting 140 Proof. We suggest using English-language ads only for the time being, as we can't guarantee support for other languages at this time. An advertiser can use "Japanese" as a targeting keyword, but be advised that the ad would likely be displayed to many Twitter users who aren't Japanese.

At the moment the best way to target Japanese people would be to use specific location names as keywords; namely, places in Japan that Twitter users are likely to indicate as their "Location" on their Twitter profiles.

 

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