なぜIBMやサンやオラクルは「Ajax!」と言わないのだろう
Ajaxがブームになるずいぶん前から、いくつかのベンダはJavaScriptに対応した開発ツールをリリースしたり発表したりしています。が、なぜかマイクロソフトをのぞく大手ベンダからはAjaxというメッセージが聞こえてきません。例えば、IBM。
今をさかのぼること2年と少し。私がAjax的なアプリケーションを初めて見たのは、2003年12月の記者発表会でのWebSphere Studioのデモでした。記事には次のように書きました。
ノーマルなJSFではユーザーインターフェイスはHTMLによって表現される。しかしIBMはこのJSFのコンポーネントをカスタム化し、Webブラウザ上での入力チェック、リターンキーで移動できる入力フィールド、数値の3けたのカンマ区切り表示、IMのコントロールなどをJavaScriptで実現する予定だ。
JavaScriptを、Webブラウザ上にリッチなユーザーインターフェイスを構築する技術としてために利用することは「ローテクだけど面白いな」と思っていました。
それをさらに3カ月さかのぼった2003年9月には、サン・マイクロシステムズが当時開発中のJava開発環境Project Rave(現在のSun Java Studio)をサンフランシスコのイベント「SunNetwork 2003」でデモしたときにも「JavaScriptでもっとリッチなユーザーインターフェイスを作ることを検討している」と説明していたことを覚えています(製品にはまだ実装されていないようです)。
最近では、2005年6月にサンフランシスコで行われたJavaOneで、オラクルの開発ツールJDeveloperがAjaxに対応すると発表していました(これも製品はまだのようです)。
またサンは、2005年10月にグーグルと提携を発表したときに、直前まで周囲が「AjaxでOpenOfficeを実装か!」と大騒ぎしていましたが、結果はAjaxのAの字も含まれていませんでした。
このように、既存の大手ベンダのいくつかはAjaxのずっと前からAjax的な手法に取り組んではいるのですが、その取り組みはあまり知られていないですし、ベンダ側からもAjaxに関するメッセージは不思議なほど聞こえてきません。なぜでしょうね?
それぞれのベンダの事情を想像すると、IBMはリッチクライアントのテクノロジとして、Ajaxよりも、EclipseベースのWorkplace Client Technologyに力を入れようとしている側面があるからかもしれません。サンは自社のソフトウェア資産をオープンソース化している一方で、ソフトウェアベンダとしての自社のポジションをどう位置づけようとしているのか悩んでいてるところで、開発ツールに関するメッセージが出しにくいように思います。オラクルは開発ツールに関するメッセージがもともと強くないベンダだったのですが、2006年はミドルウウェアのレイヤに注力することを考えると、これから何かのメッセージが出てくるかもしれません。それがAjaxかどうかは分かりませんけれど。いずれにせよ、これらはあくまで想像です。
前回のエントリで、オープンソースでのAjax統合開発環境の状況について触れたうえで、Ajaxの開発環境でもマイクロソフトが先行するかもしれない、ということを書きましたが、競合ベンダの動向からも同じことが言えるように思います。
次のエントリでも、もう少しAjaxについて書きます。