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夏目房之介の「で?」

藤子・F・不二雄ミュージアムと川崎市市民ミュージアム

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昨日金曜は、ゼミ生たちと研修遠足で、川崎市藤子・F・不二雄ミュージアムと川崎市市民ミュージアムを回った。本当はゼミ合宿で、また青虫に行きたかったのだが、ドライバーと車の調達難やスケジュールが合わなかったりで、合宿はとりやめて「遠足」になった。藤子ミュージアムは登戸で、川崎ミュージアムは武蔵小杉なので、南武線で20分ほどで移動できる。

藤子ミュージアムは、ジブリ方式でローソンで入館時ごとのチケットを買う。午前10時からの回に入り、昼食後移動。娯楽施設なので研究的にはあまり見所があるわけではない。Fさんの本棚は面白かったが、残念ながらちゃんとそれぞれの本が見えるようには展示されていない。原画が多いが、全体にそれほど面白いかというと、う~ん。

手塚記念館のような工夫もあまりなかったかな。図録もまだできてないし、ミュージアムショップでもさして買うものはなかった。学芸員のいない施設だろうから、資料をうまく活かしたり、展示をして人を集めるという面でも、どうなんだろう。ジブリみたいにアニメも上映されるが、まあジブリと比較はできないよね。

川崎ミュージアムは、以前はマンガ専門の学芸員が二人いるという、非常に珍しいミュージアムだったこともあり、貴重な資料が山ほどある。今はひとりだけになった学芸員は、古い知り合いで、お願いして学生たちと一緒にマンガ関係の収蔵庫を見せていただいた。

こちらはもう、我々のような者には宝の山に入らせてもらったようなもので、時間がないので、ゆっくりは見られないものの、もう幸せな限りだ。学生にも「ここに住みたい」というのがいて、気持ちはわかる。赤本の資料を見せてもらったが、その中に高橋真琴の『赤い靴』(53年?)と『恐竜攻撃』という小さな赤本を発見。

とくに『赤い靴』には、鏡や服の端や効果線などと接するコマ枠線をやたら消したり、不思議な背景の効果のデザインとか、楕円形の集まりみたいな樹の葉が飛んでいるとか、やはりこの人はデザイン装飾的なセンスでマンガ描いているんだなと思った。ヒロインの背景が白く抜けてるコマなど見ると、余白を活かした少女マンガ的美意識の元祖でもあるのかなと思わせる。

川崎には、うちでアニメのゼミを持ってもらっている佐々木先生(ササキバラ・ゴウ氏)も参加。その後、夕食会では川崎の学芸員金澤さんもきて、マンガ論で盛り上がった。おかげさまで、なかなかいい研修遠足になった。

川崎市藤子・F・不二雄ミュージアム
http://fujiko-museum.com/pc.php

川崎市市民ミュージアム
http://www.kawasaki-museum.jp/

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