なぜ「在宅WEBライター」という仕事が現れたのか、そのバックグラウンドとは
民主党のマニフェストや見かけ上の空前の円高によって、不況不況、引き締めないと、といった内容のTV番組や雑誌の特集が増えています。
その中で多いのが「主婦がちょっとした時間でできる副業」系ですね。一月ほど前に私もテレビで見ました。
そこでは、今までのような内職以外にも、ペットシッターやモーニングコールといった、なるほどといった物から、懸賞サイトやモニター応募、"せどり"などの昔からのもの、あるいはクロスワード作成なども紹介されていて、なるほどなぁと思うことも多くありました。
ブログの記事を書くという仕事
その中で「ブログの記事を書く」という仕事がありました。
「モニター商品を使って、その感想をプラスでもマイナスでもいいからブログに書く」という内容でTVの中では描かれていました。
しかしこれを実際の所はどうなんだろうと求人などを見てみると、どうもそれだけではないようです。
TVの中であったような、口コミマーケティングの一環として一般ブロガーに記事を書いてもらうという仕事はあります。
また、翻訳絡みであったりインタビュアーであったりという、ストレートな物もあります。
しかし割合として多いのは、やはり
- SEOのために必要なバックリンクサイト群の構築が目的だと思われる物
- WEBサイトに載せる「利用者の声」や「レビュー」を作るもの
のようです。
どんな状態なのか
※在宅WEBライターの仕事をしている方への批判ではありません。あくまで仕組みのお話です。
「WEBライター 募集」「ブログライター 募集」などで検索すると募集をしているサイトが見つかります。
その中の求人要項をいくつかピックアップしますと
- 「 **(伏せ)で有名な"*****"について」「にきびケアの"*******"について 」500文字程度のオリジナル文章を30記事ほど書ける方
- 弊社で新規に立ち上げたニュースサイトの在宅ライターの募集。記事投稿数は1日平均3記事以上を目安に記事投稿を行って頂きます。
- 「債務整理、おまとめローン、不動産担保ローン…健康 、美容 、コスメ、・ダイエット…葬儀 ・家族葬…ギャルママ 、流行の音楽、動画」の記事執筆。原稿料は、記事1本あたり300文字以上で100円
- 弊社携帯サイト内の活性化の為に掲示板に携帯電話から書き込みを行っていただく
- こちらで用意したキーワードをもとに記事を作成、 記事はある程度起承転結になっていればOK、そして、書いていただいた記事をサイトとして形にする
- 当方で用意したキーワード及び関連語句を入れた、1記事500文字~800文字でオリジナルの記事を書く、記事は検索エンジン対策を意識した文章で書くのが目的です
- 副業でアフィリエイトサイトを運営していおり、復縁のレポートを作成していただける方
- 情報商材のライティングパートナーを募集
- 当社が運営する…Twitterにて、 既存のユーザーフォローや新規のユーザー獲得を目指し、 Twitter上においてコメントやDMを媒介とした ユーザーとのやりとりを担当…
- 無料ブログのID・PASSを取得して頂く作業
- いろいろなブログへコメントを書き込んで頂くお仕事です。
- 情報商材のレビューを書いていただける方を募集します。 実際に情報商材を買う必要はなく、憶測や主観での批評でもかまいません。
- 弊社運営のハウツーサイトにハウツーを投稿する仕事です
などなど、少々きわどい内容の物が並んでいます。
また、レビュー記事の依頼内容も「実際に使っていなくても憶測や主観でOK」であったり、あるキーワードに沿った内容で書いてくれればそれでいい、という
「あるメッセージを文章として読者に分かりやすく伝える」といったような、本来ライティングの目指すところと離れている物が少なくありません。
検索エンジンの発展とソーシャルグラフへの対応
これは、「1.Googleに始まる検索エンジンの性能アップ対策」と「2.レビューなどの客観的評価・ソーシャルグラフが重視されている今のユーザ像」への対応策だと考えていいんじゃないかと思います。
1.Googleに始まる検索エンジンの性能アップ対策
バックリンクサイトの作成、以前はこの辺りは自動生成ツールの役割でした。
自動生成ツールは大概が
- 狙っているキーワードに関する記事をたくさん取得して適当にMIXする
- キーワード以外は適当に日本語を並べて意味不明な文章を作る(ワードサラダと呼ばれる)
- 特定のキーワードに関するRSSやWikiなどの内容を並べたまとめページのような物を作る
といった仕様でした。こういったサイトを量産して、一部のSEO業者はバックリンク用のサイトを量産し、そこから顧客のサイトにリンクを張って上位表示などをさせていました。
しかし、今では検索エンジンの文書解析性能が高くなったことによってこういった質の低いブログは評価されなくなってきています。
そこで、その対抗策として一部のSEO業者が手を付け始めているのが、こういった「人海戦術でのバックリンクサイト量産」だと思われます。
その際に必要なのは、安くそれなりの質を書いてくれる人、つまりWEBライターさんなんですね。大体報酬は1記事100円~200円程度が相場です。10ページモノ1サイトでも1,500円程度で内容が作れてしまう。100サイト作るためには15万円で作ることができる、ガワは無料ブログを使えば(その方が素人っぽいので○)無料です。
これは費用を考えなければ、非常に効果的です。
SEO業者は数千数万のサイトを持っていますから、全てを入れ替えようとすると恐ろしいことになりますが、量より質を重視するGoogleへのスウィッチによって若干楽になると思います。
そして、実際に手で書いているならば、Googleがこういったサイトを判別するのは非常に難しいのではないでしょうか。
実感として、アフィリエイト目的であったり中身の薄いサイトを、特に検索結果の2ページめ以降で見ることが多くなってきています。
サーチエンジンはどう対応していくのでしょうか。下手に巻き込まれないように今後の動向は要注意かと思います。特にレビュー系サイトなどをお持ちの方は。
2.レビューなどの客観的評価・ソーシャルグラフが重視されている今のユーザ像
多少なりとも高価な物を買う場合、ほぼ100%といって良いほど消費者は「レビュー」をその大きな判断基準とします。
楽天市場では「レビューを書いてくれたら送料無料」のような事をやる店がたくさんありますし、Amazonでも身内のレビュー記事が後を絶ちません。
また「○○○○ 評判」「○○○○ 悪評」といった検索フレーズはかなり増えています。
そういったレピュテーション系のキーワード対策として、WEBライターにブログを特定のテーマと構成で書いてもらっているようです。また、合わせ技として他のサイトへのバックリンクサイトとして使われていることもあります。
往々にしてそういった記事はなんとなく中身が薄かったり、うさんくさいので分かるので良いですが、ソーシャルグラフへの信頼性がどんどん落ちていくということに変わりはありません。
「WEBライター」というものの出現はいつから?
GoogleInsightForSearchを使って、関連キーワードの変化を見ます。
「ライター募集」というキーワードは比較対象として入れています。
これを見ると、
- まだまだ少ないですが「WEBライター募集」というキーワードでの検索が昨年末から増加。今ですと1,300件/月くらい
- TVの影響もあると思いますが「ブログライター募集」が最近2ヶ月くらいで上昇
「WEBライター」単体で調べますと2010年2月頃からが増えているようです。
また、「ブログライター 募集」は大きく先々月で伸びましたが、伸び始めたのは今年の頭のようです。
どちらのキーワードも近年急に増えました。
WEBサイトのライティングという物は、近年突然増える物ではありません。以前から必要とされてきた分野です。
ですので、この増加はいわゆる「WEBサイトのライティング」以外のものと考えて良いかと思います。
私はこれが、SEO関係とレビュー関係の案件募集が一気に始まった時期ではないかと思っています。
これは憶測ですが、米国Yahoo!がBingとの提携を予定していることを発表したのが2009年の7月末で、Yahoo!Japanがどうするかはなかなか決まらず今に至ったわけですが、SEO業界が「もうツールでは無理だ」とリスクヘッジに本格的に動き始めたのが、2010年初頭だったのかもしれません。
そして、低価格でそんなことをやってくれる人というのは普通の会社員ではいないので、自然と主婦の副業などに流れていったのではないでしょうか。
いずれは人件費の安いインドなどに流れるかもしれません。
どこかで歯止めをかけないといけない
これが進めば進むほど「意図的な順位上昇」「レビューの信頼性ダウン」が進んでいきます。
しかし、これらは先ほどのような、言い方は悪いですが「サクラ行為」の結果です。そういった物に頼って上位表示をする、あるいはできてしまうというのはインターネット全体にとって悪い物と考えざるを得ません。
検索エンジンの技術に期待することもありますが、こういったことをする企業側も意識を変えて頂きたいなというのが正直なところです。
ビジネスはノールールではありません。理想論ですが、一般通念的に公正なルールのもとで切磋琢磨し、争うのが正しい姿ではないでしょうか。
今駅前で作っている建物があるけれど、何ができるんだろうというときには地域の求人除法を見るのが一番速いですよね。
それと同様に、求人情報を見ることで、他の企業がどんなことを裏で行おうとしているのかが分かることがあります。求人情報は以外と情報の宝庫ですね。