「はじめの一歩」幕ノ内一歩のデンプシー・ロールを発声に応用
「はじめの一歩」という漫画をご存知でしょうか。
作者は森川ジョージ。1989年から週刊少年マガジン(講談社)で連載しています。
この漫画の主人公、幕ノ内一歩の必殺ブロー、デンプシー・ロール(英: Dempsey roll)。
これはボクシングの元世界ヘビー級王者ジャック・デンプシーが編み出し、実際使っていた技です。
漫画の中でのデンプシー・ロールは、上半身を数字の8の字に振り続け、反動を利用して左右の連打を叩き込みます。体重を効果的に乗せることができるため、大きな破壊力を得られるのが特徴です。
10月16日、合唱団コール・リバティストに、東京混声合唱団のテノール歌手、志村先生をお招きしての稽古を行いました。
志村先生は、このデンプシー・ロールを応用して発声の指導をします。
ひざを落として、体を左右に振りながら、パンチを繰り出すような動きと共に、声を出すのですが、腰をひねった瞬間にしっかり重心を腰に入れられるかどうかが重要。
左右に動くひねりと、下半身の支えを常に考えるのです。
特に、音程を跳躍させるところで、使うと効果があります。
この方法のもう一つよいところは、横隔膜を自然に使えることなのではないかと思いました。
わたしは「歌は声帯ではなく横隔膜」と言っても過言ではないと考えます。
声帯に負担のかかる歌い方は続かないのです。
実際、歌う場面において
「さあ、腹式呼吸ですよ!」「腹から声を出して!」」「横隔膜を使って!」
と言われることが多いと思いますが、普段の生活で、意識もしていない場所をいきなり使うことは難しいのです。
しかし、この「デンプシー・ロール」方式は、何も言わなくても、自然に横隔膜を使って発声することになりますから、理にかなっている方法と言えるでしょう。
ひねりや振り子の動きというものは、少ない力で大きなエネルギーを発揮するのに大変効果的な動きですね。
そういえば、イチロー選手も「振り子打法」というバッティング方法でした。
この日の練習では、ジョスカン・デ・プレの「アヴェマリア」と林光編曲「この道」を歌いました。
「この道」は日本人が良く知っている名曲ですね。
林光は、この曲を最初の1ページ目をアカペラで編曲し、高級感のある音楽に仕上げています。
そして、日本らしい曲でありながら、なぜか賛美歌の香りを感じ、懐かしさと敬虔さと、両方の気持ちがこみ上げてきます。
あらためて、この曲の素晴らしさを知り、日本語の美しさと日本人であることに喜びを感じています。