一生の宝になる戦略構築力を身につける方法
戦略構築力は、持って生まれた才能ではありません。
訓練次第で身に付けられる能力です。
ふりかえってみると、20代の頃の私は、その場その場で刹那的に考えて行動し、想定していなかった問題に出会って驚きながらまた必死に取り組んだりして、長時間労働もいとわずがむしゃらに仕事をしていたように思います。
一方で、しっかりと戦略的に考え、発生するトラブルも想定内で、少々のことがあっても軸をぶらさずに進めて、着実に成果を出す人もいます。
違いはやはり、最初に時間をかけて戦略をキッチリ立てているか否かだと思います。
ここで言う戦略は、非常に幅広いものです。
・ビジョンの策定
・客観的な状況の把握。世の中全体の動向や他社(他者)・お客様・自社等の状況分析
・全社戦略との整合性確認
・課題抽出と仮説の構築、及びアクションプランの策定
・中長期的なビジネスプランとマイルストーンの設定
・中長期的な視点の中で、この1年間の活動をフェーズ毎に策定
・その目標を達成するためのチーミングや組織作り
・チーム内での問題意識の共有方法
・各チームメンバーの役割の合意
・達成指標の設定
・達成指標の管理方法の策定。仮説検証サイクルの回し方の設定
等など。他にもあるかもしれません。
戦略を立てずに進める際に出会う問題は、上記のいずれか、または複数がしっかり出来ていないことが原因で発生することが多いようです。
もちろん、最初に時間をかけて戦略を立てるよりも、「まずは、がむしゃらに動いてみる」ということも、場合によっては必要です。
例えば、全くの新規事業を立ち上げる際には、上記のような戦略策定に時間はかけるよりもまず動くべき、ということが多いようです。しかし、やはり戦略的な視点を持っているかどうかで、成功確率は格段に違ってきます。
さて、若い頃の私は、この力をどのように身につければよいのかが分かりませんでした。
幸いながら、現在の私はある程度の戦略構築力を身に付けることができました。
私の経験では、戦略構築力は、何らかの形でまず方法論を理解し、日々の仕事を通じて実践し続けることで、確実に身に付いてくるものなのではないかと思います。座学だけでは身に付かないように思います。
言い換えると、最初の言葉に戻りますが、訓練次第で身に付けられる能力です。
しかも、いわゆる形式知等の知識とは異なり、この能力はいったん身につけるとその後もずっと使えます。一生の宝になります。
さて、方法論を学び、日々の仕事で実践すればよいことは分かったとして、実際にこの力を身に付けるには、具体的にどのようなことをすればよいのでしょうか?
私がお勧めするのは、戦略構築力を持っている人とのコーチング等を通じて、自分が抱える問題について徹底的に議論し、上記に挙げた項目について話し合いながら、実際に戦略策定を行っていく、という方法です。
私自身もこのようなコーチングを実施させていただいていますが、非常に効果的です。
やはり、ご自身が抱えている課題はご自身が一番分かっています。
その課題をうまく抽出し、実際の戦略策定の枠組みに当てはめてみて、仮説を立てて実行計画に落とす、という作業は、一つの方法論であり、ある領域についてこのことを徹底的に行うことにより、戦略策定の方法論を確実に体得することができます。
ただ、このためには大前提が3つあります。
・自分自身が、「この戦略構築能力を身につけたい」という大きなモチベーションがあること
・コーチングを実施する人との信頼関係を持てること
・自分自身が専門領域について、ある程度のビジネス経験を持っていること
この3点です。尚、コーチングを実施する人は、必ずしもその専門領域についてビジネス経験を持っている必要はありません。コーチングする人の戦略構築力に、自分のビジネス経験と課題を当てはめればよいからです。
「戦略構築力を付けたい」という方は、もしお近くに模範となり、かつ「この人なら、是非相談してみたい」という方がいたら、是非お声をかけてみてはいかがでしょうか?
「コーチングはちょっと」としり込みする方も、あきらめる必要はありません。
師匠を見つけ、そしてその師匠に私淑すればよいのです。
ただ、師匠と言っても、その師匠に実際に教わるのではなく、その師匠の仕事を見たり、「師匠だったらどうやってこの課題を解決するか?」ということを考えたりして、自分から積極的に学んでいくのです。
実際、私の場合はコーチングしてくれる人はいなかったので、この方法で学びました。
高齢の禅宗の僧侶が、以前見たテレビ番組で、「真似る」と「学ぶ」ということについて、以下のように語っていました。
・真似を一日で止めたら、一日の真似だ
・真似を二日で止めたら、二日の真似だ
・しかし、一生真似を続けたら、それは学ぶということだ
「真似」から「学ぶ」ための心得を教えてくれる言葉ではないでしょうか?