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ハーバードビジネススクールの日本スタッフとして働く中で、気づいたこと、感じたこと、考えたことを、ゆるゆるとつづります。

クリエイティブな人は嘘つき?ハーバードビジネススクールの最近の研究でわかったこと

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ハーバードビジネススクール(HBS)はそこで学ぶ学生にとっても大変厳しい場所だが、そこで働く先生にとっても非常にタフな世界だ。Assistant Professor(助教)からAssociate Professor(准教授)に上がるのは半分、そこからテニュア(終身在職権)のある教授になれるのがさらに半分。競争を勝ち抜いてHBSに入った超優秀な先生たちのうち4分の1しか残れない仕組みになっている。そして昇進の際に最も重視されるのは、アカデミックな業績だ。

教育のプレッシャーも半端なく大きい中で研究にもいそしむ。そんな先生たちの最新の研究内容がわかるHBS Working Knowledgeというサイトがある。

ずぼらなのであまりちゃんと見てないけれど、先日たまたま開いたら「おっ」という研究内容が載っていた。The Dark Side of Creativity: Original Thinkers Can Be More Dishonest(「クリエイティビティの闇:独創的な考えを持つ人は不正直?」)という研究だ。Francesca Ginoというイタリア出身の女性の先生。意思決定、倫理、クリエイティビティなどに関して社会学的な実証研究を行ってきた。

論文は「悪魔はこの世に天才やその他の手段を通じて現れる」という18世紀のフランスの啓蒙思想家ドゥニ・ディドロの言葉の引用から始まる。そしてクリエイティビティと不正直(dishonesty)との相関について 調べた実証研究の結果を発表している。

研究では以下の4つの結果が得られたそうだ。

  1. 人とは異なる考え方をするという項目でスコアが高いクリエイティブな特徴を持つとされた実験参加者は、その他の参加者よりごまかしやあざむきが多い。
  2. クリエイティビティ属性は知性(intelligence)よりも非倫理的な行動を予測する際のよりよい判断材料となる。
  3. クリエイティブに考えようとしている参加者は、クリエイティブであろうとすることによって、不正直に行動する傾向が高まる。
  4. またクリエイティブに考えようとしている参加者は、不正直な行動を正当化する能力が高いため、不正直に行動する傾向が高まる。

また現実の人を対象としたフィールドスタディによって、クリエイティブな仕事を行う個人は、倫理に関してはより柔軟である(すなわち倫理の基準がゆるい)ことを証明した。既存の枠組みを超えた思考(Out of box thinking)ができることと、社会のルールをも軽々と越えることとは、ある程度相関している、という結果である。

個人にとっても組織にとっても社会にとってもクリエイティビティということが重要視されている時代。その時代の流れに対し「ただクリエイティブになればいいというものではないよ」と一石を投じる研究だ。

イノベーションとはコミットメントであり、その根底にあるのは真・善・美である、と説く野中郁次郎教授の「知識創造理論」に心から賛同する私としては、真のクリエイティビティと倫理は両立すると思うところが強いものの、それでもクリエイティビティと倫理の関係に真正面から取り組むこうした研究があるのはおもしろいなあと思う。

Gino先生とは今のところ彼女のリサーチアシスタントを通じてあるトピックに関する日本の先行研究の有無を調べたぐらいしか接触がないけれど、いつか一緒にちゃんと研究なりケース作成なりを一緒にできる機会があればいいな、と願っている。

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