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廃盤ジャズCDの再発と再販制度について

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マニアックなお話しではあるのですが、私が最も好きなジャズミュージシャンを一人挙げよと言われれば「スティーブグロスマン」ということになるで しょう。相当ジャズ好きな人でないとご存じないかもしれませんが、爆音とアグレッシブなソロラインを特色とする天才肌のサックス奏者です。ミュージシャン ズ・ミュージシャンの一人と言って良いでしょう。というわけで、グロスマンのCDは積極的に集めてきたのですが、超有名という人でもないので廃盤になって 入手困難なCDも結構あります。

そのような入手困難盤のひとつ”Perspective”がようやく再発され無事入手することができました。まあ正直、80年代初期風のフュージョンサウンドが時代を感じさせ、万人にお勧めできる作品ではないですがグロスマンのソロはすばらしく、ファンの人にとっては今回の再発は大変よろこばしいことでしょう。

さて、このCD、元々はAtlantic Recordから出ていたものですが、再発はWounded Bird Recordsというところから出ています。この会社は、昔のAtlanticのマイナーな作品をどんどん再発している会社のようです。しかもお値段もそれほど高くありません。

同じ流れで言うと、故マイケルブレッカー参加時代のSTEPSの入手困難盤であるSTEP BY STEPもNYC Records(STEPSのリーダーであるマイクマイニエリが運営するレコード会社のようです)というところに注文しました(これはまだ届いてません)。このSTEP BY STEPというCDは日本コロンビア制作ですが長らく廃盤状態で中古市場ではとんでもない値がついていました。

グロスマンに話を戻すと、幻のレコードのひとつとして、チックコリアの「日輪」というレコードがありますが、これも結局CDでは再発されていません。制作は東芝EMIです。さらにいうとビクター(当時)製作の「フィルウッズ&ジャパニーズリズムマシン」という作品も入手困難で、中古価格が高騰しています。

何となくではありますが、日本制作の昔のマイナーなジャズ(フュージョン)レコードが再発される可能性は結構低いような気がします。

「そんなこと言ったってレコード会社もビジネスでやっているのだから売れない作品の再発なんてやってられない」という声が聞こえてきそうですが、日 本独自の制度である再販制度に対する批判があるとレコード会社(というかコンテンツ提供側)は必ず「CD(書籍)は文化にかかわる商品であり、市場原理だ けにまかせていると、売れ筋の商品ばかりが流通することになり、商業ベースに乗りにくい良質な作品を聴く機会が埋もれてしまう」と反論してきます。

この主張によれば、再販制度がある日本→レコード会社は目先の商売だけにとらわれずマイナーなコンテンツも積極的に流通できる、再販制度がない諸外国→ビジネス的においしくないマイナーなコンテンツが流通しなくなる、ということになります。しかし、少なくともジャズ廃盤作品の再発状況を見てみると、市場原理だけにとらわれずマイナーでも良い作品を商売気抜きで積極的に再発しようとしているのは再販制度のない欧米のレコード会社であるように見えます。

※ 本記事はテックバイザージェイピー公式ブログ「栗ブログ」からの転載です。

Comment(1)

コメント

k.thd

マニアックな話、是非、便乗させてください…

グロスマン/「Hold the Line」は、スタンダードをグロスマン節でどう料理するか、という興味から買いましたが、とても参考になりました。
STEPS時代のブレッカー/六本木ピットインのライブ版1曲目のnot ethiopiaはぶっ飛んでしまいました。
ウッズ/「Phil talks with quil」のスクラップルフロムジアップルも、節操なさすぎなくらいの高速フレーズでぶっ飛んでしまいました。

自国文化を大切にするという建前なら、百歩譲って、JAZZはともかく、演歌の復刻版は積極的に再販するのでしょうが、多分(?)そんなこともないでしょう…。ロングテールが標榜されるこのご時勢に、日本のレコード会社の相反する大義名分のせいで、泣きを見るのはいつもエンドユーザか、って感じです。(それにしても、復刻されない名盤、名演は、永久に人間の所作の歴史から抹殺されてしまうんですかね。)

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