若い頃の苦労は買ってでもせよ
昨日のブログ記事を書きながら、若い頃を思い出し、「あの頃は、お金もなかったし、仕事も空回りが多く、辛かったな・・・」と思いながら書いていました。とはいえ、後悔しているわけではなく、むしろ、「あの頃の辛さがあったおかげで今の自分がある」と考えています。
「若い頃の苦労は買ってでもせよ」と言います。
私が就職したのは平成元年で、バブル末期の就職売り手市場全盛期でした。私が通っていた五流大学(?)でも求人は山のように来ていて、大手企業からもたくさん来ていました。そんな中、私はアルバイト先の中小企業に就職を決め、アルバイト→平社員→課長→部長→統括部長→社長と、一つの会社で仕事人生をすごしてきました。
30才になるまでは、仕事面では何もよいことがないくらいひどい状態で、親からも「あの時(大学卒業時)、素直に大手に就職していれば・・・」と何度も言われたものでした。しかし、本当にそうするのが良かったのでしょうか?
人それぞれ、性格も考え方も行動も違いますから、もちろん大手に向いている人もたくさんいると思いますが、私はそういう性格でないので、中小で良かったと思うことを書くことにしましょう。
わかりやすい例で、大手に向いているか、中小に向いているかを、私なりのイメージで書いてみると、「自分が表に出たいか」「裏方でも良いか」ということではないかと思っています。私の場合、中学時代に卓球部に入っていて、2年生の時、新人戦の団体戦で市内大会優勝しました。私は2組あるダブルスの片方に入っていて、一応選手でしたが、市内大会では私のペアでない方が全て戦い、私は優勝の賞状をもらいながらも、「自分は一度も戦っていない」と、全く満足できなかったのでした。県大会に行く前に、顧問の先生に不満を言い、県大会では1回戦目で私のペアを使ってくれました。が、見事に負け、団体でも1回戦敗退となってしまいました。親にその話をしたら「顧問や監督の判断に文句を言うなどありえん!」と叱られたものでした。が、私は自分が戦って負けたのならあきらめもつきますが、戦わずに勝ってもうれしくなかったのです。
高校野球などでも、名門校はそれこそベンチ入りするだけでも大変で、大勢いる野球部員は観客席から応援をしていますが、私には無理です。「裏方のおかげで」というのは理解できるのですが、それでは嫌なのです。
このような性格ですと、敵が多い分野はまず無理なのです。他の人に勝る圧倒的な才能を持っているわけでもなく、努力家でもないのは自分で良くわかっていますので。狙いは「ニッチ」です。特に、苦手な人や嫌いな人が多い分野は狙い目です。私が当時C言語に燃えたのは、できる人が少なかったからですし、中小企業を選んだのも、人が少ないからです。ネットワークプログラミングに集中したのも、ネットワーク好きのプログラマーは少ないからです。お客さんのところに積極的に行ったのは、コミュニケーション好きのプログラマーが少ないからです。
敵が少ないということは、自分が主役になりやすいのですが、同時に、苦労も呆れるほどついてきます。「手ほどきしてくれる人が近くにいない」「自分で何とかするしかない」からです。中小企業では、自分の専門に専念していることはなかなか許されません。プログラマーでも、営業や事務処理など、なんでもやらないと仕事が回らないのです。
おかげで、社会人として必要な知識・経験を、いきなり本番で学ぶことができ、痛い目にあいながらも、数多くの貴重な経験ができてきたわけです。自分で選んだ道ですから、文句は言いませんし、投げ出すこともしません。まだまだこれからだと思っていますが、若い頃の苦労のおかげで、ここまで成長できたと実感しています。
大卒の就職率がどうのこうの、あるいは、学生の大手志向は根強い、などという情報を見るたびに、「自分でなんとかしたいと思わないものかなぁ・・・」と感じます。実際に大手で働いたことも無いのですが、中小でもやりたいことはできるものです。むしろ自分の思いを実現しやすいのは中小でしょう。大手が良い、中小が悪いと一律に決めつけるのではなく、どういう人がどういう職場に向いているかをもう少しきちんと理解することの方が大切なのではないかと思うのです。
同時に、若い頃は失敗しても一生懸命やっていればかわいがられるものです。若いうちにたくさんチャレンジして失敗しておくのは間違いなく「正解」です。年を取ってからではそう簡単に失敗が許されなくなります。たくさんの失敗を、リスクが低い状態で経験できるのが若いうちなのです。そういう意味でも「若い頃の苦労は買ってでもせよ」なのです。