ポストSIビジネスのシナリオ: クラウドを活用したサービス
「顧客価値としてSIビジネス」の拡大が、ポストSIビジネスの目指すべき方向である。これについては、昨日の投稿で説明させていただいた。
では、どのような方法があるのだろうか。まずは、クラウドを活用したサービス・ビジネスについて考えてみよう。
AmazonやGoogle、SoftLayerのように、自らが膨大なシステム資源を保有し、サービスを提供することは、容易なことではない。ならば、そういうサービスを利用して、その上に自らの付加価値を加えて、自分たちのサービスとして提供するビジネスが考えられる。
3つのタイプのサービスについて、考えてみよう。
調達・構築・運用 代行サービス
ひとつは、セルフ・サービス型クラウドの調達、構築、運用を代行するサービスだ。Amazonのような自分たちで調達、構築、運用を行わなくてはならないセルフ・サービス型IaaSは、コストパフォーマンスが卓越している。ユーザー企業は、このようなサービスを利用したいと考えるだろう。しかし、我が国の場合、ユーザー企業の情報システム部門は、このような業務をこれまでSI事業者に委託してきた。そのため自分達で行うにも十分なスキルがなく、要員もいない。
それでも、コスト削減や変更への迅速な対応は待ったなしの要請だ。その要請に応えようというサービスだ。アイレットのcloudpackなど、事例も増えつつある。
但し、クラウドは運用や調達が高度に自動化されているサービスであり、お客様の個別システムを運用することに比べて、大幅に作業負担が軽減されている。また、変更への迅速な対応が価値であるクラウドは、作業毎に個別に工数を見積、依頼するというスタイルにはそぐわない。
高速開発・迅速変更 サービス
二つ目は、開発・実行環境を提供するPaaSを使用し、お客様のアプリケーション開発の需要に迅速に応えるサービスだ。また、変更要求にも迅速に対応することができる。KitoneやFoce.com、Heroku、BlueMixなど、多くのサービスが提供されているが、こういうものをうまく使いこなすことだろう。
当然のことだが、ひとつひとつの作業工数は少なくなる。また、前のケースと同様に「即応」が価値であるこのタイプのサービスは、作業毎に個別に工数を見積、依頼するというスタイルにはそぐわないだろう。
ビジネス・プロセス支援 サービス
三つ目は、SaaSを美味く使いこなせるように業務のコンサルティングを行ったり、お客様毎の個別業務スタイルに合わせて、アドオンやカスタマイズを行うサービスだ。
ここで大切なことは、独自のノウハウを提供することである。既存のクラウドサービスを代理販売するだけでは収益は上がらない。また、差別化も難しい。また、SaaSだから基本的な機能は提供されているので工数は稼げない。むしろ、継続的な改善や付加価値の向上、あるいは、アドオンをSaaSとして提供するといったストック型のビジネスにすることが必要となるだろう。
上記、3つはいずれにしても「工数積算・個別見積」にはなじまないビジネスだ。サブスクリプションあるいは従量課金型のような収益モデルを考える必要があるだろう。
また、もうひとつ大きな発想の転換が必要になる。それは、「システムを売るビジネスからシステムを使うビジネスへの転換」だ。自らがシステムを使い、顧客価値を高めてゆくためのシナリオを描く必要がある。当然、活用するシステムに精通しなければならない。また、ストック型と言うことになれば、お客様のビジネスを理解し、継続的にビジネスの改善に貢献するという考え方もこれまでにも増して求められるようになるだろう。
*更新しました* 今週のブログ ---
専任の “「お客様の立場」責任者” を持つ
「なんで、俺たちが、そんなことしなきゃいけなんですか?」
ある社内プロジェクト会議で、ベテランのエンジニアが、営業の責任者にかみついていました。こんな不毛な議論を続けても、仕事がうまくすすむわけはありません。
なぜこんなことになるのでしょうか。どうすれば良いのでしょうか。
今週のプログは、そんなことを考えてみました。
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〜これからSIerはどう生き残ればいいか?
- 国内の需要は先行き不透明。
- 案件の規模は縮小の一途。
- 単価が下落するばかり。
- クラウドの登場で迫られるビジネスモデルの変革。