オルタナティブ・ブログ > 鈴木いっぺい の 北米IT事情: 雲の向こうに何が見えるか? >

アメリカのIT業界を渡り歩いたビジネスコンサルタントがユニークな切り口で新時代のIT市場を分析

2013年のクラウド予測:第二弾:テレコム業界の2013年の動向

»

記事=www.gigaom.com

投稿者=David Meyer, senior writer for GigaOM

投稿日=1/3/2013

Ovum社の行った市場分析によると、テレコム業界に於ける今後の成長路線はかなり限定される、と予測している。

まず、市場全体の状況を見ると、テレコム業界は2012年の総売上$2兆ドルを達すると見ており、2011年の$1.96兆ドルと比較して、さほどの成長は見込めない、と見ている。

一方では、いくつか成長著しいセグメントがある、とも述べている。その筆頭はモバイルブロードバンド市場であり、年間平均成長率で2016年までに平均して19.2%の成長を維持する、と予測している。

テレコム業界の取り組んでいる事業セグメントを整理したのが下記の図である。モバイルブロードバンドが突出している状況が見える。

Untitled

モバイルブロードバンドが成長路線にある、という事はさほど目新しい話ではないか、業界のアナリストが分析している状況によると、この状態もかなり短期間で次のステージに移行する事が想定されている。アナリストによると、次の業界に於ける波はOver-the-Topサービスになる、と意見が共通している。

Ovumが指摘している問題は次の点である。

“Over­-the-­top services such as digital music and mobile gaming are not compelling revenue opportunities for telcos. However, they are important for strategic reasons.”
「デジタルコンテンツ配信やモバイルゲーミング等のOver-the-topサービスはテレコム業者にとっては直接的な売り上げにはつながらない、という事を認識する事が必要であるが、むしろ戦略的な理由をもって対応する必要である。」

この戦略的な理由とは、マーケットシェアを確保する事に注力すべき、という点に絞られる。テレコム業界の現状は、既にOver-the-top市場で何年も事業を行っているベンダー(小規模なWhatsAppの様な会社や、Appleの様な巨大企業も含む)に対抗するのは事実上難しい、という事がこの分析の背景にある、と言える。

もう一つ、期待を持てる興味深いビジネス領域として、テレコム事業者が始めている、パブリッククラウドサービスがある、とOvum社は指摘している。

Untitled2

上記に表によると、クラウド事業は年々伸びていて、特に、SaaSの事業に大きな期待が持てる、と言える。Ovum社の統計によると、2012年には$190億ドル、さらに2016年には$400億ドルの売り上げが期待される、という数字を算出している。

テレコム事業者の提供するSaaSは、エンタプライズ企業を対象としたサービスである事が特長であり、主としてUnified Communicationの様な、セキュリティの要件が高いアプリケーションの提供が多いのが特長である。テレコム業界の強みとしては、このセキュリティ要件に対して従来の専用線事業、VPN事業等で培ったノウハウを活かす事が出来る、という点があげられる。このセキュリティを活用したアプリケーションとして、他にCRM等のアプリケーション(主として特定のSaaSベンダーとの協業になる)等もあげられる。

IaaSPaaS は、SaaSと比較して規模は小さくなるが、成長のスピードは等しく早い、と言える。総合的に見て、モバイルブロードバンド事業と比較して規模は小さいが、成長率の面から大きな期待を持つべきであり、うまくそのビジネスチャンスをつかむ事が重要な要件になる、という事が言える。 

Comment(0)