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IRSのフォームSS-4でEINを申請をするときにライン7bでモヤモヤさまぁ #kdp

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KDP(Kindle ダイレクト・パブリッシング)で電子書籍を売ったことがない方には、何のことやら訳がわからないタイトルと思います。

アマゾンのKDPで出版した電子書籍が売れると、売り上げの35%または約70%のロイヤリティ(著者印税)をアマゾンから受け取ることができます。このときKDPの契約相手が日本のアマゾンではなく米国本社であるため、ロイヤリティに対して米国の源泉徴収が行われます。この税率はなんと30%です。米国の所得税は高いです。

そのままにしておくと、

本の売り上げ x  0.7(ロイヤリティ70%の場合)x 0.7(米国の源泉徴収後)= 売り上げの 49%

となって、日本に着く前に早くも売り上げの半分になってしまいます。

ここで一つ方法があります。日本と米国の間で所得税に関する租税条約が締結されています。正しく手続きすれば、米国での源泉徴収はなくなります。しかし、この手続きが、これまたハードルが高いです。

  1. IRS(アメリカ合衆国内国歳入庁)にフォームSS-4(リンク先はPDFファイル)を提出して、EIN(Employer Identification Number、雇用者番号)を発行してもらいます。
  2. 受け取ったEINの番号をフォームW-8BENに記入して、米国アマゾンに送ります。
  3. 米国アマゾンで手続きが完了すると、米国の源泉徴収は免除されます。

これらのフォームは当然ながらすべて英語です。送るときは国際FAXか国際郵便です。平均的な日本人にとっては、英語で確定申告をするくらいの難易度です。

日本のアマゾンでもさすがに気にしているのか、KDPのサイトで日本人が提出する場合の書き方を例示してくれています。

SS-4は個人と法人で書き方が異なる部分がありますが、基本的にアマゾンのサイトの例を参考にして書けば大丈夫です。

ここで気になるのは、項目7bです。

一言「7b SSN, ITIN, or EIN」と書いてあります。

image

SSNはSocial Security Number(社会保障番号)です。米国の刑事ドラマに時々登場するアレですね。米国で納税申告する時も使うみたいです。ITINはIndividual Tax Identification Number(個人用納税者番号)で、SSNを取得する資格がない人が納税申告する際に使われます。

ほとんどの日本人は、SSNやITINを持っていませんし、EINを申請するためにフォームを記入しているので、EINはまだ持っていません。

ネットでSS-4の書き方を検索すると、『7bに「EIN」と書く』と説明しているサイトがたくさんあります。どこかで始まって、孫引きを繰り返して拡散しているようです。

これを信じていいものかどうか、モヤモヤしています。

こういう場合に唯一信用できるのは、ソースにあたることです。

検索エンジンでフォームSS-4を探すと、PDFファイルに直リンクしていることが多いので気がつきにくいかと思いますが、その一階層上のページがあります。ここから「Instructions for Form SS-4 (HTML)」をたどると、SS-4の書き方の説明(リンク先はPDFファイル)があります。

ここでライン7bは以下のように説明されています。

WS000514

私のつたない英語力によると、「unless以下でない限り、SSNか、ITINか、EINをライン7bに記入しなければいけない。」という意味になります。

unless以下の解説は省略しますが、いずれにしても、SSN、ITIN、EINを持っていなければ、ここは何も書かないのが正解のように思われます。実際のところ、アマゾンの例では、7bは空白になっています。

自分がSS-4を提出した時はライン7bを空白にしましたが、そのまま無事に受理されて、EINの番号が発行されました。

もし「E」と「I」と「N」と書くのであれば、英語だと「enter “EIN”」のようにダブルクォートで囲むのではなかろうかと思ったりします。

プログラマーなら、

hoge7b = ein;

hoge7b = “ein”;

の違いと言えば、わかると思います。

いまごろIRSの中の人は、日本から届く「EIN」と書いてある申請書を前にして首をかしげているのではないかと思いつつ、「EIN」と書く、があまりに多いので、自信が持てずにモヤモヤしている夏です。

どなたか正解を教えてください。

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