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人材育成の現場で見聞きしたあれやこれやを徒然なるままに。

サイボウズのワーママ動画にちらっと登場するパパが見ている景色

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昨日2015年2月25日(水)、勤務先グローバルナレッジネットワークにおいて、人事・人材育成担当者向けのコミュニティ活動「OJT茶話会」第14回会合を開催しました。(もともとOJTについての企業事例を共有し、有機的に影響し合っていこう!として、2011年に発足したのですが、現在では、「働く人」にまつわる様々なテーマを扱っています。現在23社がメンバになっています)



今回は、サイボウズのあの「ワーママ動画」仕掛け人である大槻幸夫(コーポレートコミュニケーション部長 「サイボウズLive」プロダクトマネージャー)さんをゲストにお迎えし、そもそもサイボウズさんはワークスタイルについてどういう施策をとっているのか、から始まり、動画の企画意図や世間の反応・・・などなどをお話しいただきました。ひじょーに面白かったし、勉強になりました。


細かいレポートはいずれ書くとして、あの動画をご覧になると、「シングルマザーか!?」「パパはどこへ行った?」と疑問に思う人も多かったようです。私の同僚も「あの人はシングルマザーなんだと思った」と感想を述べていたほど。

パパが全然登場しないのですが、一瞬だけ、ほんの一瞬だけ、スマホの画面にパパからのメッセージが映るのですね。(19秒ごろ)

子どもが熱出たと保育園から連絡があり、ママが「熱だって」とパパに連絡すると「ごめん、今見た。会議が終わらない・・・」というコメント。

それで、「あー、私が休むってことになっちゃうのよねぇ」なんてことをつぶやく・・・という展開。

あの場面は、制作スタッフたち(プロダクションのメンバーがワーママ集団で、私たちの「日常そのまま」ですとおっしゃったとか)が、「ワーママの日常あるある」を描いているわけですが、あの「スマホ画面」のことについて、昨日集まったワーパパたちが非常に盛り上がっていたのが印象的でした。



以下、こんな話をしていましたよ、の再現。

「熱出たー、ってメール来て、こちらも手が離せない、抜けられない状況の時、う、どうしよう、こまった、どう返事すればいいんだ?ともんもんと考えるんですよね」
「大丈夫?なんて返事すると、他人事みたい、と思われるし」
「病院、連れて行ったの?なんて質問書くと、そんなことはわかってると言われちゃうし」
「こういう表現で返したら、オクサン、どう思うかな、と文章をすごく考えてしまって・・・。結局、返事の文面をぐるぐる考えているうちに1時間くらい経って、送ったら送ったで、返事遅いって叱られる」

・・・

「あの、"状態だけ"を書いてくるメール、対応に悩むよねぇ、困るよねぇー」「そうそう」
「どうしてほしいって希望・要望を伝えて欲しいんだよねぇ。」


あの一瞬の「ママ→パパのメッセージ」、「パパ→ママからの返信」という場面の裏側に「パパから見える景色」ってのがあるんだなぁ、とこの時初めて気づきました。

この話は、少し盛り上がり、「そういえば、私たちは、"困った"とは言うけど、なかなか"助けて"って言えないかも。子育てに限らず、介護でも自分の病気でも、"こうしてほしい"って意思表示しない傾向があるのかも。頼ってはいけないと考えるからかもしれないし、弱音吐くのは格好悪いと感じるからかもしれないし、そもそも、頼っていいんだ、ということすら思いつかないってこともあるかもしれませんねぇ」なんてことを私は述べました。


このワーママ動画のママの送っているメール(メッセージ)は、「熱があるんだって」という「状況の通知」なんですね。そこには、「あなた、お迎えに行けない?」「行ってくれるとありがたいのだけど」という気持ちが行間に隠れているのだけれど、「会議終わらない・・・」と返事きて、「また私が調整するの?」とがっかりするような場面なんですね。

でも、この時、「熱があるんだって。あなた、帰れないかしら?」と質問するなり、依頼するなりしたら、「ごめん、会議が終わらないので今は無理・・」とか、「だったら、何時に帰れる? できれば、20時までに帰ってほしい」などと言われれば、それについてパパも何らかのアクションを取れる(かもしれない)と、昨日の参加ワーパパはおっしゃるわけです。



「察してほしい文化」ってありますよね、日本人の心の中に。「察して・・・」「さっして・・・」と。

だからはっきり言わない。言われないから、パパは「このメールはどう返事したら一番もめごとが少ないだろうか」とか「どういう返事を妻は期待しているのだろうか」と、ぐるぐる、ぐるんぐるん考えてしまう。

動画が描く世界には、向う側にパパがいて、そのパパが、必ずしも子育て(や家事など)に無関心なわけではないケースも多々あるはず。

あの動画を同じストーリーで、パパの視点から想像してみると面白いかも、と思いました。

それにしても、「SOS」とか「Help!」ってホントに言いづらいのですよね。

介護の世界でも、公的支援を拒否したり、近所の手助けに頼ることもしなかったりして、介護家族が孤立していき、果ては・・・・という悲しい事件もしょっちゅう起こっています。

「助けて」と「私一人ではできない」とか「少し力貸して」とか、もっと周囲に求めてもいいんじゃないか。

・・・そして、それは、家庭のことだけじゃなくて、仕事場でも同じで、「無理」「できない」と思ったら、SOSとかHelpって言うことで、うつ病なども予防できる部分があるように思います。

「察してほしい」ではなく、「私はこうなの」「こうしてほしいの」と表現していくことは、決して悪いことではなく、Assertive(アサーティブ)な態度なんですよね。

そして、Assertive とかAssertion ってのは、「誰もがアサーティブになる権利がある」と言われているもので、だから、自分の気持ちを正直に伝えることから初めてみるのもよいのかもしれません。Assertiveって「権利」なんですよね、もともとの精神は。



そういえば、1月は介護で頭の中が大混乱だった私は、上司に「こんなにたくさんの仕事、できましぇん」と泣きついたことがあり(このあたりの経緯は後日詳しくレポートしますけれど)、その時、上司が何と言ったか。

「うーん、そうだなぁー、淳子さんの介護を替わってあげることはできないけど、仕事だったら誰かが替わればいいわけで、だから、ホントに無理だったら、こっちでなんとかするんで、まずは、家族のケアと自分の身体のケアをしっかりしてください。仕事のことは心配しなくて大丈夫だから」

この言葉は、本当にありがたく、そういう言い方、凄いなぁと今でも感謝してます。

あの時、「無理」って言ってよかった。カッコ悪いと思ったけれど、「無理」って言わなかったら、完全に自分が崩壊していたと思うので。



・・話はもとに戻しますが、ワーママ動画から昨日の「茶話会」では、ワークスタイルや組織と人のコミットメント、経営からのメッセージとか一人ひとりのキャリアとか幅広く議論したのですが、多くの方がいろんな意味で刺激を受け、「会社に戻ったら、まずはワーママ動画を皆で見て、議論してみます!」とおっしゃっていました。

ある方は、「ワーママ動画、妻と見てみます。うちの子はここまで小さくないんだけど、あの時はこんな気持ちだったの?なんて尋ねて、妻と話し合ってみたいと思います」とおっしゃいましたら、サイボウズ・大槻さんは、「あ、それやって大失敗した男性を数人知っているので、十分お気を付けください」とニヤリ。

なんとなく想像つきますね。家庭内炎上・・(笑


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