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音楽配信は好調か? その1

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今、日本の音楽配信は、ITMSなどの登場もあり、非常に盛り上がっています。
しかし、その一方で、音楽配信を経営する(サービス提供する)立場の方からは、
「思ったより、(売上)が伸びない」
「儲からない」
という声を良く聞きます。

音楽配信は売れていないのか?

日本レコード協会の発表を見てみますと、
2005年上半期(2005年1月~6月)での
インターネット・ダウンロード売上は、5億円強となっています。
この数字は協会会員42社の数字ですので、ほぼこれが日本の市場規模といえます。

「モバイル」の売上が、135億あることを考えますと、
確かに、「多くはない」というのが実感だと思います

音楽配信サイトの多くは、この1~2年でサービスを開始したばかりですし、
市場としては、まあまあの滑り出しと見ることもできます。
しかし、配信サイトの構築には、数億に上る費用が必要なことを考えると、
配信サイトとしては、なかなか厳しいというのが現状といえます。

なぜ"思ったより"売れないのか?

さて、なぜ音楽配信は、期待したほど売上が伸びないのでしょうか?
それには、いくつかの理由が考えられますが、
今回はそのうちのひとつ、潜在競合について考えて見ます。

ここで言う潜在競合とは、
「違う商品やサービスが、実は同じターゲットを狙っている」
という状況ですが、
音楽配信は、いわゆる顕在競合(=わかりきったライバル)である、
CD販売や、CDレンタル以外に、非常に強力な競合がいたということです。

見落としていた「潜在競合」

まず競合状態になるためには、当然ターゲットが同じである必要があります。
では、現状の音楽配信のターゲットとは、どんな人でしょうか?

・音楽が好き ・・・当たり前ですね
・PCが使える。
・ネットにつながっている。
・クレジットカードが使える。
この3つが問題です。カードが使える時点で、ほとんどが成年で収入がある人と言えます。
つまりは、「オトナ」です。
そして、楽曲をセレクトしたり、ポータブルプレーヤーに転送したり、
そもそも、PCを自分用に持っていて、ネットを楽しんでいる。
いわば、「デジタルスキルの高い人」であるといえます。

端的に言えば、音楽配信は、
「デジタルスキルが高いオトナ」がターゲットと言えます。

デジタルスキルが高いオトナは激戦区

読書やCD視聴は、ほとんどデジタルスキルが不要です。
言い換えれば、あらゆる人が対象・ターゲットとなります。
(=潜在顧客、市場が大きい)

一方で、ネットサービスやデジタル家電は、
ある程度デジタルスキルを持つ人を対象・ターゲットとしています。

仮に、「ビデオ録画を簡単にできる人」を
基準とすると、これより高いデジタルスキルを持つ人は、
ケータイやTVゲーム、デジタル家電、その他のWebサービスのターゲットであり、
デジタルスキルが高くなるに従い、数が少なくなっていきます。
(=潜在顧客、市場が小さくなる)

20051012つまり、デジタルスキルを必要とする音楽配信は、
デジタルスキルが高いオトナという(数が少なく競争が多い)激戦区で戦っている
ということが言えます。

これが、潜在競合です。

次回は、その他の問題を見てみます。

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