SaaS/ASPの企業利用率は2% じゃなく21% ?いやもっと??
推定が2倍とかならまだしも10倍も違うとかなりまずいとか、聞きますが、
矢野経済研究所は、企業が「SaaSにコストメリットを感じていない」と考えていることを明らかにしました。オンラインサービスの利用状況を聞いたところ、SaaSと回答した企業はわずか2.2%。今後のSaaSの利用意向についても、83.9%が「なし」と答えました。
というレポートはサマリーレポートに書かれたSaaSの定義と実体の分析表で食い違っている気がします。私がどこか間違っているのかもしれませんが、気づいてから三晩ほど寝ても同じように見えるんです。
上記記述は、こちらの、ITmediaの記事
からの引用です。「明らかにしました」というリンク先では、
SaaS(Software as a Service)の定義:ソフトウェアを、ネットワークを通じてサービスとして提供する形態のこと。
ここではASP(Application Service Provider)も同義とする。
と定義さfれています。しかし、その更に先の分析サマリーPDFでは、こうあります。
SaaS 他オンラインサービスの利用状況
SaaS他オンラインサービスの利用状況(MA) n % SaaS(Softwareas a Service) 15 2.2 ASP(ApplicationService Provider) 93 13.7 共同利用型システムを利用 51 7.5 利用してない 530 78.3 不明 4 0.6 矢野経済研究所作成
注1:集計対象社数677 社、複数回答
各種業界団体とかでも、SaaSとASPを厳密に区別はできないということで、同義として扱うことには異論ありません。しかし、記事に引用されたショッキングな見出し
SaaS を利用している企業は僅か2%
は、ここだけASPを抜いてどうする????
と疑問が尽きません。
また、クラウドコンピューティング的には、「共同利用型システム」も広い意味のSaaSとして捉えたほうがいいと私は考えます。ハイブリッドクラウド、とか、シェアードクラウドとかいろいろな呼び方がされるかもしれませんけど、これも一種の「クラウドコンピューティング」と見るほうが便利でしょう。
そういう考えで、私なりに再構成したのが下の表です。
SaaS他オンラインサービスの利用状況(MA) | n | % |
有効回答全体:「集計対象社全体」 から 「不明」 を除外 | 673 | |
SaaS他オンラインサービスを利用していない | 530 | 78.8 |
SaaS他オンラインサービスを何らか利用あり | 143 | 21.2 |
矢野経済研究所のデータに基づき坂本作成
不明の4を母数に入れても誤差範囲の0.4%なので、おおざっぱに見て、SaaS(広義)の利用率はこの調査では、約21%とすべきだと思います。
定義によってもっと利用されている?SaaS/ASP
さて、話には続きがあります。この調査は情報システム部門にされたのだと思いますが、情報システム部門が恐らく把握していない(かもしれない)SaaS/ASPが数多くありそうなのです。
例えば、Web アクセスの統計データ取得や解析を提供する、Webアクセス解析ツール。今の主流は、JavaScriptのタグをWebページ上に記述して、別のサーバーからそのアクセス情報を収集して統計データとして蓄積するWebビーコン型が主流です。このツールの利用形態のかなりは、サービス提供業者側にサーバーがあるため、このツールだけでもSaaS/ASPの利用率はかなり高いと推計されます。このほかにも、いろいろなASPサービスがあります。
例えば、 オルタナティブ☆ハシモト を書かれている、橋本社長の会社、ヌーラボが運営されている、プロジェクト管理ツールBacklog は、ASPがメインです。かつて愛用してとても助かったのですけど、こういう細かいところに手が届く便利なツール類はけっこう草の根で使われているのじゃないかと想像しています。
Web マーケティングでは他にも、メルマが配信サービス、セミナー登録サイトサービス、Web会議、とかとかいろいろあります。費用がマーケティングインフラ予算とかで落ちていて、情報システム部門が把握していないとか、「情報システム」と思われていないとか、いろいろありそうな気がしており、一度、実際に使っているツール名とベンダー名まで細かく公表されるともっとよく分かると思います。
私が把握していない、よく使われているSaaS/ASPが他にもあると思います。コメントなどで指摘いただけると助かります。
お断り:
本ブログでの坂本英樹による投稿やコメントは、あくまで個人の主観に基づくものです。現在および過去の勤務先の意見や見解を表すものではありません。