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プロダクトマネジメントとイノベーション

パテント業界に吸収されたYouTube

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GoogleによるYouTube買収の主役はベンチャーキャピタルのSequoia Capitalだと言われています。同社はYouTubeの取締役会を完全に牛耳っており、Googleの取締役会のメンバーでもありますから、今回の買収劇は、YouTube破綻前に同社を売却したいSequoia社のキャピタリスト同士が仕掛たんだろうと思います。

さて、キャッシュを膨大に持つGoogleですが、今回の買収は株式交換でした。YouTubeは未公開で赤字だと言われていますから、同社をDCF方式や市場株価方式で評価することはできません。そうなると買収の調印はなかなか出来ず機を逸しますから、取締役会で急いで決議するため、株式交換によって懐を痛めずに買収を成立させたのでしょう。

しかし、株式交換といえども、$1.6Bという買収金額(相当株価)はどうやって決まったのでしょうか? 今後、株主総会で承認を得るためには、その評価方法を明確にしておかなければなりません。通常、YouTubeのような問題児は評価できませんから、おそらく、事前に著作権問題を払拭し、しっかりした黒字化路線が敷けたのだと思います。それは、相次いで発表されたUniversal Music Group、Sony BMG、CBSといったパテント業界との提携なのではないでしょうか。この契約書を算定担当の会計事務所に提示した可能性もありますね。

要するに、YouTubeは従来の無法地帯から知的財産を守る路線に完全にシフトし、メディア業界の広告塔になる。そして、さらに広告収入をメディア業界と山分けする、ということでしょう。このような路線を成功させるためには、さらに多くのメディアと提携しなければなりません。著作権侵害で訴訟を仕掛けようとしている日本のメディアも決断のしどころです。

YouTubeの唯我独尊のビジネスモデルが破綻したことで、ある意味で「正統派アメリカンビジネス」に行き先が落ち着いたというところでしょうか。それにしても米国のVCはなんと豪腕なんでしょうか。

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