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予測できないITの行く先を、あちこち歩きながら考えてみます

オンラインメディアでも破壊的イノベーションが始まったのだ、恐らく

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このところ個人的に気になっているのが、最近相次いで日本語版が登場したGizmodoTechCrunchEngadgetなどの、新しいオンラインメディア。

どれも記事が時系列に並んでいるブログ的レイアウトがメイン。記事にはコメント欄もありトラックバックもできます。ガジェット系オンラインマガジンのEngadgetはWeblog Incが運営するブログだと自称していますし、GizmodoもHTMLを見るとCMSにMovableTypeを使っていることが分かります。TechCrunchもCMSとしてオープンソースのブログツールであるWordPressを使っているようです。

これらの本家サイトは米Technoratiのブログランキングにも登場していることから、第三者的にも「ブログだ」と認識されているようです。ブログをプラットフォームにしたメディアの登場、というところです。

ところで、オンラインメディアは「フロー系」と「ストック系」に大別できます。ITmediaなど主に最新情報を追っているメディアはフロー系。インプレスWatchも、CNETもそうですね。最新ニュースが大事で、3日前のニュース記事はもう価値が落ちている、というのがフロー系の特徴。オンラインメディアの大半はこちらに分類されるでしょう。

一方でストック系は、手前みそですが技術解説がメインの@ITとか、用語事典のe-Wordsとか、Wikipediaとか。寿命の長いコンテンツを大量に保持しているのが特徴。

で、EngadgetやGizmodoやTechCrunchなど新興メディアで採用しているブログというスタイルは、フロー系の情報を扱うのであれば必要十分な表現力を持ってますし、中身もそれに合わせてカジュアルに書かれています。ブログスタイルは読者も十分読み慣れているだけでなく、コメントとトラックバックでメディアに参加可能です。収入は想像するしかありませんが、広告のかなりの部分でGoogleのAdSenseが使われていますから、専門の営業チームはないか、いても少数でしょう。

一方で既存の、オンライン業界のなかでは老舗のメディア達は、オリジナルのCMSを構築し、ベテランの編集者がしっかりした記事を書き、読者は読むことしかできず、専門の営業チームがバナーやタイアップ広告を獲得するスタイル。

この2つを比べると、新興勢力はうらやましくなるほど身軽に見えます(僕は老舗側にいるのです!)。

ちょっとステレオタイプですが、既存メディアの高コスト高収入の構造に対して、新興メディアは低コスト低収入構造で参入しはじめた、と捉えることができるのではないでしょうか。少なくとも、過去の積み重ねがものをいうストック系に比べると、相当に参入障壁が低いフロー系のオンラインメディアでは、このビジネス構造の異なるメディア群の競争が事実上始まったといってもいいと思います。

クリステンセンの「イノベーションのジレンマ」的にいえば、オンラインメディア業界で破壊的イノベーションが始まったのかもしれませんね。

とはいえ、メディアの最大の資源は人であり、仮にビジネス構造的に新興勢力が優勢だとしても、少なくとも日本では圧倒的に人的資源は既存メディアに偏っているし、その流動性もそれほど高くない(つぶれそうな出版社でも愛着を持って居続ける人たちは多い)ため、同じテーマでがっぷり四つに戦うと、新興メディアは相当不利だろうと個人的には思います。

その面で、既存メディアがフォローしていないガジェットやWeb2.0的トピックにフォーカスしたテーマで新興勢力が登場したことは適切な選択であることは間違いないです。このまま彼らが成長してくれれば、メディアの選択肢も増え、記者・編集者の流動化も進んで健全な競争も促進されて、オンラインメディアも一層発展することでしょう。個人的にもそういう方向に業界が進んでくれるのは喜ばしいことです。応援してます(立場上どっちもね)。

ちなみに、サイボウズラボの秋元氏のブログで、こうした新興メディアの情報を一覧でまとめてくれています。僕が知らなかったものもいくつかありました。

蛇足ながら、既存メディアにチャレンジしているのは新興商業メディアだけじゃないですけど。その話はまたいずれ。

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