予測できないITの行く先を、あちこち歩きながら考えてみます

藤田社長はデマルコを読むべきだと思う

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渋谷ではたらく社長のblog」で有名なサイバーエージェントの藤田社長が、エンジニアを20人、6月末までにさらってでも採用する、とブログで宣言しています

ブログによると、藤田社長は決算説明会でアメーバ事業の進捗の遅れを指摘され、「一番は技術者の頭数が明らかに不足していることです」と答えたそうです。アメーバ事業は同社のコアサービスに成長させるつもりとのことで、「そのために技術者を採用できないことは致命傷であり、急いで何としてでも挽回しなければならない」との思いで採用をブログで宣言。採用するのは、アプリケーション・エンジニア、サーバー・エンジニア、ネットワーク・エンジニア、デザイナーで合計20人とのこと。

採用強化策の一環として、技術者のいるフロアをリニューアルして開発に集中できる環境に改善、ひとり当たりのスペースをひろげ、最終面接では自ら今後の方針などを説明給与面を含む待遇面を見直し、優遇。そしてマッサージを入れる、などとしています。

ここまでが、藤田社長のブログのあらまし。

これに対して「安易な開発者の追加は自殺行為」や「技術者を頭数で数える奴が報酬を弾むかな」といった手厳しい意見や、「理解を求めるな、報酬を求めよ」や、「IT企業には技術者と経営者の両方と話せるバイリンガルが必要」といったアドバイス的なものなど、議論が起きています。

エンジニアの側からは、サイバーエージェントを率いる藤田社長のことは(ギークに対する)スーツの1人と見なすでしょうから、「頭数」といった言い方や「報酬をはずむ」といった、とりかたによってはエンジニアの技術を軽視しているような表現にはどうしても反発してしまうところでしょう。

例えば、はてなの近藤氏の「はてなに入った技術者の皆さんへ」などに対する反応と比べてしまうと、エンジニアに届くメッセージを書ける経営者と、そうでない経営者の違いというのは、エンジニアからの扱われ方が格段に違うなあという気がします。ただ、世の中に(少なくとも日本には)近藤氏のような経営者は非常にまれでしょうから、藤田社長が格別にエンジニアに理解がない、というわけではありません。

むしろこうやってベンチャー企業のトップがブログで日頃から発信し、エンジニアに対しても率直に語りかける姿勢は、反応はどうあれ注目されていますし、スーツがギークに近づこうとしているものとして僕は高く評価します。

そういうわけで、藤田社長にはもっとエンジニアに理解をもってもらい、採用を成功させるために、大変僭越ながら私なりのアドバイスをしたいというのがこのエントリの主旨です。

そのアドバイスの内容というのは、表題の通り、トム・デマルコ氏の「ピープルウェア」を読むこと。

ITに関わるプロジェクトを成功させるためには、ソフトウェアでもハードウェアでもなく、ピープルウェアこそが鍵だ、ということが主題であり、この本にはエンジニアの作業効率をいかに高め、優れたチームを構築し、目標を達成するか、というノウハウがマネジメントの精神からオフィス環境まで、きっちりと書かれています。経営者やマネージャの視点からITを成功させるための指南書として、デマルコ氏の著作がエンジニアのあいだで非常に信頼されていることは私が保証します。

曰く、
・ 管理者の役割は、人を働かせることにあるのではなくて、人を働かせるく気にさせることである
・ プログラマーの個人差は、約10倍ある
・ エンジニアには集中できる環境が必要だ
・ 生産性と年収の関連性はほとんどない
などなど。

「ピープルウェア」は、エンジニアの必読本としてつねになんらかのリストに入っている定番本です。技術的な内容はほとんどなく、経営者にも読める内容で読みやすく、集中すればたぶん半日で読み終えられると思います。

もちろんデマルコ氏の本に書いていることがすべではありません。それでもスーツの代表である経営者が、エンジニアの定番であるデマルコ本を読んで環境改善をコミットすれば、それは多くのエンジニアにとって自分たちを理解する努力をしてくれている姿に映るのではないか、と思います。そして、そういう経営者の声は、いまよりもずっとエンジニアのあいだに響くものになっていくはずです。

#そういうわけで、このエントリはちゃんと藤田さんのブログにトラックバックしてみました。

Comment(8)

コメント

渋谷の社長

アマゾンで買ってみました。
ご推薦ありがとうございます!

新野さん、はじめまして。
>管理者の役割は、人を働かせることにあるのではなくて、人を働かせる気にさせることである
これはエンジニアだけでなくどの職種にでもあてはまる大切なことだと思います。
エンジニアの場合はモチベーションがあがり自発的になるだけで身に付ける技術力は格段に違いますね。
また仕事もその場的なものではなく、全体(最終的な目的)を見添えた行動にかわり、質が高いものになってきます。
つまりエンジニアを多く採用するには社内で受け入れる体制ができているかまずは考えたほうが良いですね。
よく大量採用して、大量に辞めていくという悪循環の会社がありますがこれはまさに人を働かせることに焦点を当てすぎているからだと思います。
そうなると会社の雰囲気も悪くなってきますしね。

渋谷の社長さん、本物でしょうか?だとしたらびっくりです。
yotsuyanagiさん、はじめまして。働く気にさせる、といったことは言葉では簡単ですが、実際には簡単ではないですよね。受け入れ態勢を作る≒ちゃんとした組織をいつでも作っておく、というのは、何にせよ難事業ですね。

野暮な突っ込み

>「管理者の役割は、人を働かせることにあるのではなくて、人を働かせる気にさせることである」

「働く気にさせる」では?
みんなが他人を働かせる気になったら、誰が働くのだろうか?

mohno

座布団一枚 :-)

野暮な突っ込みさん、その通りです。修正しました。念のため部屋に戻って本を確認しました。
個人的には、このエントリで、愛読しているbogusnewsさんからトラックバックをもらって嬉しいです。

とおりすがり

「藤田社長が格別にエンジニアに理解がない、というわけではありません。」
その通りです。おそらく「平均的」なレベルです。日本の経営者は、みんな性根が腐ってますね。所詮は「管理職」上がりの素人が経営者の皮を被ってるだけで、プロの経営者なんてほとんどいないんですよ。

みゅう

正直、無理に雇えば今は乗り切っても後で困る事にもなりかねません。ITだからといって頭数の問題だけで対応するのは経営者としては問題ではないでしょうか?
たぶん、心を持って会社に参加される方は少ないと思います。

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