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"攻めのIT" ができる情報システム部門になるために

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「ITを戦略的に活用できない企業は"消えていく4割"にまわってしまう」(経済産業省 商務情報政策局 石川正樹審議官

世界は、本格的なデジタルビジネス時代を迎えている。 モバイル、ビッグデータ、IoT、人工知能、ロボットなどの 急速な発展に伴って、これらのITを事業にどう利活用できるかが企業の将来にとっての重要な要素となっている。 身 近な例で言えば、流通小売業におけるAmazonの台頭、運輸業におけるUberの台頭など、これまで競合でなかった企業 がITの利活用によって圧倒的な競争力を持ち、従来の業界勢力図を脅かす存在となり得るのである。

このような環境を受け、"攻めのIT" という言葉をあちらこちらで 聞くようになった。"攻めのIT" とは、ITの活用に よる製品・サービス開発強化やビジネスモデル変革を通じて新たな価値の創出し、競争力の強化をすることをさす。

これまでのIT利活用は、業務の効率化、コスト削減を目指すいわゆる "守りのIT" であった。 これまでも、戦略情報 システム(SIS)、ERP/CRMの導入、データウェアハウス/ビジネスインテリジェンス(DW/BI)、コンピュータテレフォニーなど "攻め" とも言えるような "最新ITの利活用" が進展してきたが、これらのほとんどは "社内の業務" を対象とした IT 利活用であることがほとんどで、いま語られている "攻めのIT" によるビジネスモデル変革とは、まったく異なるも のだと考えられる。

最近では、経産省による "攻めのIT活用指針" の策定や "攻めのIT経営銘柄" の発表などもあり、従来 ITに関心のなかった企業の経営者であっても "攻めのIT" という言葉を耳にすることが増え、そのために自社の "攻めのIT" 戦略が気になり始めている経営者も少なく無いのではないだろうか?

私はこれまで情報システム部門とIT企業の両方を交互に経験させていただいてきたこと、そして一昨年末から各種のCIOレベルの会合への出席や弊社主催の「CIOラウンドテーブル」などでさまざまなお話を伺える機会があったので、それらをもとに、"攻めのIT" のための情報システム部門改革について考えてみたいと思っている。

検討にあたって考えるべきことは以下のようなものだと考えている。

1)情報システム部門の位置づけ
多くのCIOレベルの方々の話を伺ってわかったことは、情報システム部門の位置づけが企業によって異なり、大きくは以下の2つに分類できそうである。

a)間接部門としての情報システム部門

  • 総務部電算室の流れをそのまま踏襲した位置づけ。
  • 一括採用した新入社員の一部が、本人にとっては不本意な状態で情シスに配属。
  • 何らかの事情で事業部門(開発、製造、営業等)から情シスに職種転換した中堅社員。
  • "私はITのことは全くわかりません" と着任挨拶をするCIOや情報システム部門責任者。 
  • コスト削減が情報システム部門のKPIであり、それが全てである。

b)戦略部門としての情報システム部門

  • 各事業部門、間接部門をリードする位置づけ。守りのIT領域においてもBPRを主導してきたなど。
  • 新卒採用時に、情報システム部門の候補者として選考し、配属。
  • 事業部門のエース級の人材を、情報システム部門に一時的に一定期間配属し、事業部門の状況を情報システム部門に浸透させる。
  • CIOや情報システム部門責任者は、経営視点で物事を考え、また自社のITと競合他社のITの利活用状況や世の中のトレンドを理解している。
  • 情報システム部門のKPIは、コスト削減だけではない。

他にもありそうだが、時間がなくなってしまったので、今日はこの辺で。

2016/3/25追記: 続編エントリーを書きました。

2016/3/31追記: 
 "攻めのIT" ができる情報システム部門になるために その2
 "攻めのIT" ができる情報システム部門になるために その3
 "攻めのIT" ができる情報システム部門になるために その4

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