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iPod vs Walkman BCNランキングの結果から考えたいこと

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Appleの記録は一休み?

以前のエントリーではiPodが携帯オーディオプレイヤー市場を鎮圧してかなりの年月が経った、ということに触れましたが、8月最終週のBCNランキング上では、ついにその記録が止まりました。ちなみにBCNランキングとは全国の主要家電量販店(Sony styleやApple storeは含まれていない?)からPOSデータを集計したもので、これは日本の店頭市場の約4割をカバーするそうです。統計データはしっかり用語の定義や調査対象・集計方法を確認して読み込まないと、とんでもない判断をしてしまうことになりかねませんので、落ち着いてこのデータを見ていきたいと思います。

BCNランキングからわかること、そして注目したいポイント

さて、このデータから直接的に何がわかったでしょうか。

全国の主要家電量販店の販売データをメーカー別に台数で集計し、その比率を見たらソニーが上回った。

それだけです。

このようなものを見ると、うっかり「遂にソニー復活!」とか「Apple不振」的にとらえそうになってしまいます。実際、NHKのニュースでは「国内販売シェアが逆転」ということでこのようなニュアンスで報道していました。しかし、このデータからだけでここまでの判断は強引な気がします。両者の販売チャネル戦略も異なるため、なおさらです。

ちなみにシリーズ別でみると、第1位はiPod nano 8GBの21.7%、第2位はNW-E042の6.2%、というかなりの大差がついていますので、ソニーは様々な商品を投入し、総力戦で量販店店頭におけるシェアをなんとか取り戻した、ということになります。一方、AppleのほうはiPhoneや9月の"New" iPod待ちが要因としてあるのでは、とBCNランキングでもコメントされていました。

しかし、このランキング記事の中で注目したいことは、「携帯オーディオ市場全体は09年3月以降、販売台数・金額とも前年割れが続いている」という記述です。もちろんBCNでつかんでいる数字の範囲ですが、量販店店頭の世界を見ると、Sonyもこのシェアの結果を見て決して安心していられないことが見えてきます。

データからじっくりに考えたいこと~商品カテゴリという罠

AppleはiPodをiPhoneに昇華させ、スマートフォンという次の成長市場に進み、無視できないほどの結果を出してきました。その売り場はApple storeやソフトバンクショップであり、もはや携帯オーディオコーナーではありません。来週もまた何かを仕掛けてくるでしょう。SonyもWalkman phoneがありますが、iPhoneと比較すればまだまだその歩みはまだまだです(携帯電話を作るのが正解というわけではありませんが)。

もし、Sonyが市場縮小の兆候がある携帯オーディオというカテゴリ、かつ量販店での店頭売りに変に固執した場合、BCNのデータにおけるシェア争いはもちろん成功をおさめるのでしょうが、ビジネスとしては???となる可能性があります。なぜならば、低価格帯品の投入や手加減なしのプロモーション戦略などを駆使して台数を捌けば、ある程度シェアは増やすことが理論上できるからです。ランキングやシェアというものはとてもキャッチーでわかりやすいため、どうしてもそこでの勝ちを追求したくなるものです(ブロガーベスト30入りを私が目標と書いたのも同じか?)。短期的にはこれでも良いのですが、その影響は長期的にジワジワ効いてきます。気がつくともうそこには潜在顧客はいない、別の市場に行ってしまった、というオチだってありえます。前のエントリーでも、カテゴリーありきの商品開発をすることの危険性を書きましたが、そのような罠にはまらず、Walkmanをより進化させながら「適切な商品・サービス」を「適切なチャネル」で提供していってほしいと思います。これからもずっと応援していきマス!

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