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マーケティングのはじめの一歩は消費者を理解することから。変化する消費者動向をとらえるためには仮説が大事。このブログでは消費者理解のための様々な仮説をデータに基づいてご紹介。商品開発・ブランディングのコンサルタントとして、あらゆる市場のイノベーションを目指して日々格闘している大久保惠司がお届けします。

生命保険市場を眺めてみた。 -消費者データから見るブランドポジション(13)-

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 先日グッドデザイン賞の2013年度の受賞作が発表されました。私も一部デザインに関わる仕事をしておりますので、毎年この時期に注目しています。最近ではその受賞作品も多岐にわたり、「デザイン」の定義がかなり広くなっていることを感じていますし、それはいいことだとも思っています。

 当然その中にはスマートフォンのユーザーインターフェースのデザインも入っています。今年は話題の生命保険会社「ライフネット生命」が「スマホの生命保険申し込みサービス」でグッドデザイン賞を受賞したと聞き、生命保険もスマホで申し込む時代になったことにちょっと驚きを感じました。

 生命保険はもともと、訪問販売型のビジネスモデルでした。そこに通販型の保険が続々と登場し、価格や保障面で新たな商品が市場に投入されたことで、地殻変動が起き、市場のプレイヤーも大部様変わりしてきたように思います。

 シングルソース・消費者パネル「ぺるそね」で、今年の8月に行った調査データをもとに、様々な市場のブランドポジションをご紹介していますが、今回はその「生命保険市場」を見てみたいと思います。


シングルソース・消費者パネル「ぺるそね」はほぼ年に一回、新しい調査を行っています。調査項目については毎回見直しを行っており、今回の調査では新しいカテゴリーをいくつか追加しました。特に今回は、金融関連サービスを追加し、「生命保険会社」「メインバンク」「電子マネー」「ポイントカード」の所有(利用)ブランドを調べています。その他に追加されたものは「栄養ドリンク」「製薬会社」「ハウスメーカー」「新聞」などです。このあたりを中心にこれからもご紹介していきたいと思っています。


【生命保険会社のベスト15】

 「ぺるそね」の回答者30,473人中、契約している生命保険会社に回答していただいた方は22,335人でした。これは全体の73.3%に当たります。その中でトップに来たのは「アメリカンファミリー生命保険」で21.6%。次いで「かんぽ生命」が16.7%。以下、「日本生命保険」(15.1%)、「第一生命保険」(11.7%)、「明治安田生命保険」(9.7%)、「住友生命保険」(9.7%)。3位から6位までは日本のレガシーな生命保険会社が並びます。

 ベスト15位までを見てみると、トップの「アメリカンファミリー生命保険」をはじめとした新興勢力が、かなり健闘しているように見えます。訪問販売型のビジネスモデル一辺倒だった生命保険市場が、通販型という販売方法のイノベーションによって活性化してきた道のりが見えてきます。冒頭に上げた、話題の「ライフネット生命」は、まだベスト15位には入ってきませんが、世の中が電子商取引にシフトしていることを考えると、近い将来に新しい勢力図に塗り替わるかも知れません。

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【平均年齢×平均男女比によるポジション】

 年齢と性別軸で、各会社がどのような人達に支持されているのかを見てみましょう。年齢が高い男性エリアが、最も競合の多いエリアと言えそうです。ここにはトップの「アメリカンファミリー生命保険」や「日本生命保険」や「第一生命保険」などの日本のレガシーな生命保険会社がひしめいています。

 年齢が高い女性エリアには第二位の「かんぽ生命」「都道府県民共済」がポジションされ、多分、主婦層を中心にユーザーを獲得している様子が見えてきます。

 年齢が低いやや男性エリアには「ソニー生命保険」「東京海上日動あんしん生命保険」が並び、年齢の低い女性エリアには「NKSJひまわり生命保険」「オリックス生命保険」が並んでいます。

 日本のレガシーな生命保険会社「日本生命保険」「第一生命保険」「明治安田生命保険」「住友生命保険」の4社はほとんど同じポジションに重なって存在していることを考えると、新興勢力は生命保険のメインターゲットとは違う層に向けたターゲティングができていたのかもしれません。

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【平均年齢×平均世帯年収のポジション】

 平均世帯年収の軸で見てみると、「都道府県民共済」が最も年収の低いエリアにぽつんと一つ離れて存在しています。これがあるので全体が上に振れている印象のポジションマップになってしまいました。「都道府県民共済」と「かんぽ生命」は主婦層が多いので、センターよりも下にポジションされているのだと思います。

 このマップでは年齢層も年収も高めのエリアが最も激戦区になっています。トップの「アメリカンファミリー生命保険」と日本のレガシーな生命保険各社がひしめいています。また、「ソニー生命保険」と「東京海上日動あんしん生命保険」が若くて年収の高いエリアにポジションされているのが目を引きます。

 それにしても「日本生命保険」と「第一生命保険」は年齢×男女比のマップでも、年齢×世帯年収のマップでも、仲良くほぼ同じ位置にポジションされています。両社とも、今後の展開としてブランディング戦略をどうするか考える余地がありそうですね。

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*「シングルソース・データパネル」とは、同一のサンプルから多様な情報を採取したデータパネルのことで、多数の項目を組み合わせたクロス集計ができる。
*データは「ぺるそね」調べ。2013年8月 n=30,473
*「シングルソース・消費者パネル ぺるそね」は30,000人の150問にわたるアンケートをデータベース化し、あらゆる角度から分析できるサービスです。利用料金は3,500円〜と手軽にお使いいただけます。
*無料でぺるそねの分析機能を利用できる「フリープラン」のサービスを開始しました。
*「シングルソース・消費者パネル ぺるそね」の詳細はこちらへ。

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