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マーケティングのはじめの一歩は消費者を理解することから。変化する消費者動向をとらえるためには仮説が大事。このブログでは消費者理解のための様々な仮説をデータに基づいてご紹介。商品開発・ブランディングのコンサルタントとして、あらゆる市場のイノベーションを目指して日々格闘している大久保惠司がお届けします。

「2013年 よげんの書」を公開します。(その2)

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よげん表紙その2.png 私の所属する株式会社コプロシステム 商品計画研究所が、今年の1月に開催したマーケティングセミナー「2013年 よげんの書」は、その年の消費者トレンドがテーマでした。内容はデータや事象からその年におこりそうなことを20項目挙げ解説するというものです。前回は年収や可処分所得の経年変化からよげんを5つ解説しました。ご興味あるかたはこちらからご参照下さい。→「2013年 よげんの書 その1

2010年〜2012年の「よげんの書」はこちらから参照できます。


【前回のおさらい】

 世帯年収とおこづかい(可処分所得)の時系列変化です。2007年〜2011年は「ブランドデータバンク」、2011年〜2012年は「ぺるそね」のデータを使用しています。

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 2012年の平均世帯年収は590万円で、2007年〜2012年の下げ幅は12.4%になります。一方平均おこづかいは2.61万円で、こちらの2007年〜2012年の下げ幅は33.4%です。平均世帯年収にくらべおこづかいは激減しています。

 基本的には収入の減少傾向は続いており、2012年に下げ止まる気配は見られませんでした。収入や可処分所得において、格差社会が進展し、多くの分野で二極化する流れが加速していると考えられます。


【20のよげん】

前回の続きから始めます。

予言(6) 「ルームシェア・シェアハウスが増える」
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 デフレ傾向が続くとはいえ、都心の住居費は、所得の減少傾向が続く単身者にとって負担が高くなって行くというのも事実です。「情報のシェアから生活のシェア」へ、という流れの中でルームシェアやシェアハウスへの関心が高まってきています。

 リクルートの調査を見てみると、一人ぐらしの人のシェアハウス経験率は、東京、千葉、埼玉、神奈川の首都圏全体での6.3%に対し、都心7区では10.2%と6割ほど高くなっています。また、女性社会人の今後の関心度は35.6%となり、その関心の高さがうかがえます。(2012年7月 リクルート「賃貸契約者に見る部屋探しの実態調査」)

 シェアハウスのメリットは家賃などの経済面でのポイントはもちろんありますが、人とのつながりを重視している人が多いようです。リビングなどの共有スペースの充実を求めるなど、「おひとりさま」が居場所を求めてシェアハウスに集う姿も見えてきます。この点から「シェアハウス」は「ソーシャルハウス」へと変化する可能性を秘めており、住産業は「居場所」を提供するビジネスに変貌していくのかも知れません。


予言(7) 「小さなコミュニティ活動が活発化する」
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 ソーシャルメディアが普及し、今まで出会えなかった人とのコミュニケーションの機会が拡大してきました。今後は興味、趣味、関心という「インタレスト」を中心にした人間関係に発展していきます。こんな背景から「オンライン」で出会った人たちと「オフライン」での現実の交流が始まる機会が増えるでしょう。

 NTTアドの調査によると、20代の33.6%、30代の26.6%の人がコミュニティ活動に参加しています。参加数は1〜3つが大半ですが6つのコミュニティに参加している人は30代の方が多くなります。複数コミュニティに参加している人にその理由を聞いてみると「共通の意見・趣味を持つ仲間を増やしたい」「いろいろな人から刺激を受けたい」「情報や体験を多くの人と共有したい」が上位に入っています。(2012年10月 NTTアド「コミュニティに関する調査」)

 一つには、ソーシャルメディアの普及によって、共通の意見・趣味を持った人を探しやすくなったことや、その人達の活動が見えやすくなったことが背景にあります。また、参加の申し込みなどもネット経由で行えるようになったことなども敷居を下げている大きな要因となるでしょう。オンラインでの交流がオフラインへと転換していく流れは今後も増えていくことでしょう。


予言(8) 「リフォームがカッコ良くなる」
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 日本の人口減少は衆知の事実ですが、全ての地域が等分に減少していくわけではありません。国土審議会の「国土の長期展望」によれば2050年までに人口が半分になるエリアは全居住地域の6割に達するそうです。そうなると現在建っている家も空き家になってしまう可能性が高くなってきます。

 野村総研の予測によると2003年のペース(約120万戸)で新築の住宅を造り続けると、2040年には空き家率が43%に達するとされています。住宅の耐用年数を考えると現在新築している家の約4割が空き家になる、という計算です。空き家が増えると居住環境が悪化します。必然的に既存の設備を活用した方がコスト的にもメリットがあるため、リフォームの需要が増えます。そんな背景から既存の設備をリフォームして快適に暮らす方がカッコいい生き方になってきそうです。



予言(9) 「消費はシルバー層が牽引する」
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 年金の支給年齢の引き上げにより、60歳以上も働き続ける人が増えています。この人達は65歳の年金受給開始までは何が起こるかわからない状態ですから、当然財布のヒモが固くなります。ところが、良くも悪くもボリュームゾーンの団塊の世代が年金を受給できる年齢に達してきました。団塊の世代が65歳を超えるのは2010年〜2015年なので、いままさにその時を迎えているのです。

 個人消費における60歳以上のシェアは約44%と言われており、日本の消費市場300兆円のうち、100兆円がこの世代でまかなわれています。また、1500兆円の個人金融資産のうち6割を60歳以上が保有しているとも言われています。団塊の世代を中心としたシニア層の財布のヒモをゆるめるための努力が本格化して行きます。


予言(10) 「消費も 女性>男性 の傾向が強まる」
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 男性のお小遣いが減少傾向にあります。新生銀行のサラリーマンお小遣い調査によると、1997年には平均66,000円あったお小遣いは2011年には36,500円と半減。これに伴って男性向けの消費財の市場がシュリンクしました。お酒、たばこ、自動車、家電などがその影響を受けています。

 逆に女性の社会進出が進むにつれ、その経済力は向上しています。特に若い世代の会社員は男女での給与差は少なく、製造業勤務が多い男性よりもサービス業勤務が多い女性の方が所得が高いくらいです。そんな背景から女性中心の市場であるスィーツ市場、化粧品などのビューティー産業は逆に伸びています。晩婚化、少子化をが進み、女性の生涯労働時間の増加と共に、この傾向は当分続きそうです。


To Be Continued...

と、いうことで、続きは次回に、残りの予言は10個...

*データは「ぺるそね」調べ。2012年6月 n=31,444
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