オルタナティブ・ブログ > 消費者理解コトハジメ >

マーケティングのはじめの一歩は消費者を理解することから。変化する消費者動向をとらえるためには仮説が大事。このブログでは消費者理解のための様々な仮説をデータに基づいてご紹介。商品開発・ブランディングのコンサルタントとして、あらゆる市場のイノベーションを目指して日々格闘している大久保惠司がお届けします。

所有ブランドからの消費者理解 -MacBook AirユーザーとLet's noteユーザーはどう違う①-

»
115025149-1.jpg

【ブランドって何だっけ?】

 「ブランド」の語源は「焼き印を押すこと」であることは、広く知られています。焼き印はその牛が誰のものかを区別するために、使われていました。マーケティングで言うブランドとは、自社の商品やサービスが、他社の商品やサービスと区別するためのあらゆる概念をさしています。ちなみに、ここで言うブランドは「ブランド品」という意味ではありません。

 フィリップコトラーは「マーケティングの技術はブランド構築の技術そのものである」と定義し「もし、あなたが提供しているものがブランドでなければ、それはコモディティ*にしかすぎない。そしてコモディティの世界では価格こそが全てであり、低コストの生産者が唯一の勝者となる」と結んでいます。

 また、ブランディング・コンサルタントのマーティー・ニューマイヤーは「ブランドとは、ある製品、サービス、企業に対して人が直感的に感じるもの」と定義し「ブランドの内容は、企業が定義付けすることではなく、消費者が定義付けすることです。」と言っています。

 つまり企業にとって「ブランド」とは、最重要なテーマであり、しかも「ブランド」のキャスティングボードは、消費者にゆだねられているということです。当然、企業が考えている「思われたいこと」と消費者が「思っていること」にギャップが生じます。企業はそのギャップを埋めるために様々なマーケティングの施策を打ち続けていくということになります。

*コモディティ:何の差別性も打ち出せない一般的な商品


【ブランドからの消費者理解】

 さて、ブランドイメージが消費者の心の中にあることはわかりました。それでは、人は何故そのブランドを選ぶのでしょうか?。人の嗜好は十人十色とはいえ、同じブランドを所有している人たちの間に、なんらかの共通項は無いのでしょうか?さらに、ブランドイメージがその人の心の中にあるのであれば、その人が選んでいる他のカテゴリーのブランドにも、何らかの法則性があるかも知れません。

 そこで私たちは仮説を立てました。様々なブランドのユーザーを分析して、その人たちの心の動きを理解することができれば、その人たちに好んでもらえるブランドや商品を開発することができるのではないかと...。つまり所有しているブランド(商品)から消費者を理解しようというアプローチです。商品・ブランドの所有というファクト情報から、人の心の動き(感動)を探り出す。私たちはこれを、感動体験のリバースエンジニアリングと呼んでいます。


【MacBook AirユーザーとLet's noteユーザーを比較してみる】

 それでは試しに消費者分析ツール「ぺるそね」*を使ってMacBook AirユーザーとLet's noteユーザーの違いを分析してみましょう。どちらもモバイルパソコンとして人気の商品です。一体どんな人が使っているのでしょうか。

 「ぺるそね」データベースの中にMacBook Airユーザーは300人、Let's noteユーザーは1,014人存在しています。男女比はどちらも7:3で男性が多く、平均年齢は41.7歳(MacBook Air)と44.3歳(Let' note)で、その違いは2.6歳。平均既婚率はそれほど違いません。両ユーザーを比較すると、Let's noteユーザーの方がお子さんがいる方が7%くらい多く、平均世帯年収では37万円ほど少なくなっています。とはいえ、基本的な属性は驚くほど似てます。

 「ぺるそね」の全サンプル(29,093人)の集計結果と比較してみると、どちらも「新しく出た商品は実際に買って、いろいろ試して見る方だ」と「新商品の情報はまめにチェックしている」という傾向が強いようで、モノ好きでこだわりがあるタイプのようです。人に「先進的」と思われたい点は一致していますが、MacBook Airユーザーは加えて「刺激的」と思われたいと考えており、Let's noteユーザーは「合理的」と思われたいと考えているようです。

 どちらも「デジタル家電」に関心が高い人たちです。MacBook Airユーザーは「雑貨、インテリアショップによく行く」人が多く「デザイン」への興味が高いようです。またLet's noteユーザーは「家電量販店」によく行く人が多く「ビジネス」への興味が高いと答えています。

 以下に共通点と相違点をまとめてみます。

共通点
  • 年齢層、男女比等のデモグラフィック的な基本属性はほぼ一致。
  • 「新しく出た商品は実際に買って、いろいろ試して見る」人が多い
  • 「新商品の情報はまめにチェックしている」人が多い
  • 「先進的」と思われたい人が多い
  • 「デジタル家電のカテゴリーに関心が高い」人が多い
相違点
  • MacBook Airユーザーの方が平均世帯年収が高く、子供のいる人が少ない
  • Let's noteユーザーは「合理的」と思われたいのに対し、MacBook Airユーザーは「刺激的」と思われたい
  • 興味の対象はLet's noteユーザーが「ビジネス」、MacBook Airユーザーが「デザイン」
  • よく行く流通業態はLet's noteユーザーが「家電量販店」、MacBook Airユーザーが「雑貨・インテリアショップ」
好みのブランド
  • Let's noteユーザーが「ラルフローレン」「LUMIX Gシリーズ」「Aya」
  • MacBook Airユーザーが「タグホイヤー」「Mac mini」「ジョージア 深煎りブラック」

 どちらのユーザーも「デジタルガジェット好き」で「先進的」な「ギーク層」と言えそうですが、相違点から見てみると同じギーク層でもちょっとタイプが違うようですね。


「ぺるそね」のMacBook Airユーザーの検索結果。
MBA.png

「ぺるそね」のLet's Noteユーザーの検索結果
LetsNote.png
 MacBook AirとLet's note、人気のモバイルパソコンに関して、それぞれのユーザーの共通点と相違点のデータを見て参りましたが、いかがでしたでしょうか。次回はもう少し突っ込んで、MacBook AirユーザーとLet's noteユーザーの所有ブランドなど様々な情報をご紹介したいと思います。これもなかなか興味深い結果になっていますので、お楽しみに...。


*「クラウド型消費者分析ツール ぺるそね」は30,000人の150問にわたるアンケートをデータベース化し、あらゆる角度から分析できるサービスです。利用料金は3,500円〜と手軽にお使いいただけます。
* 機能をフルに試せる「トライアル・パス」のサービスを開始しました。
*「クラウド型消費者分析ツール ぺるそね」の詳細はこちらへ。
 無料体験版もご用意しています。
Comment(2)